2012年1月22日(日)

熊本の青果スーパー、鮮ど市場の戦略

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 熊本県内で 店舗を展開する青果スーパーの「鮮ど市場」。その徹底した経営スタイルは地元消費者の絶大な支持を受け、イオン、夢タウン(広島のイズミが経営するショッピングセンター)などの大型店の狭間の中で、立派な利益を上げています。現在熊本県内で14店舗、宮崎県内で7店舗出店しています。10年近く前に、鮮ど市場の幹部の方にヒアリングする機会がありました。 http://sendo.jp/index.html

 幹部の方から伺った経営方針は

・仕入れはすべて店長に任せており、本部が仕入れることは無い。店長が市場に行きその日に売る分だけを仕入れ、その日に売り切る。翌日に商品を持ちこさないことで、何時お店に行っても新しい野菜、果物を売っている店だと認知してもらう。

・その日に売り切らないといけないので、無理して多くは仕入れない。午後の3時、4時で売り切れてしまうことも多々ある。お客さんにとっては使いづらい面もあるが、多少鮮度が落ちてもいつも商品が揃っているお店が良ければ、大手のスーパーに行って頂ければ良い。内は内のスタイルが好きな消費者に来て頂ければ良い。

・市場が休みの時は仕入れる野菜も無いからお店は休みになる。日曜、祝日、正月三が日、お盆などは市場が休みだから、従業員にも休んでもらう。従業員も休める時は家族と休めるので、非常に喜んでいる。早く売切れれば早く家に帰れるので、ダラダラ売らないで早く売って家に帰ろうと言う気になる。

・どんなに安い土地があっても、土地を買ってお店を作るようなことは全く考えていない。必ず賃貸で借りるようにしている。安く消費者に商品を提供するためには高い賃料は払えないので、適正賃料以下でしか店舗は借りない。地方都市では新しい道路がいくつも建設中で、新しい道路が開通すると途端に車の流れが変わってしまう。土地を買うと言うことはその土地に縛られることだから、商圏が変わっても簡単に余所に移ることができない。そういう固定化されるような経営は全く考えていない。

・店舗の内装もほとんどお金を掛けない。無駄なコストは掛けないことで、低価格で新鮮な商品を売ることに専念している。

・目標にしているのは、イオンやヨーカ堂ではない。東京にある「オーゼキ(本社世田谷区松原)」が経営の目標。オーゼキの店舗には、非常に参考になる要素が多い。

 いくらその日に売り切る量しか仕入れないと言いながら、自社の他店の売り上げも分かるでしょうから、少なくしか仕入れない店長だと無能と言われてしまいます。一番利益が上がるよう、時期、天候に合わせてどの商品をどの程度仕入れるか、毎日が真剣勝負となります。それにより各店の仕入れ能力が上がり、結果もその日にすぐに出る。また従業員も早く帰れて、休める時は休めるので、やる気も忠誠心も上がる。この経営手法であれば、すぐ近所に大手ショッピングセンターが進出して来ても、競争には勝てるはずです。

追記1)1月10日放送のガイアの夜明けでも、地方生鮮スーパーの善戦している姿を放映していました。その中でも愛知県地場の「タチヤ」も鮮ど市場と同じような経営手法が紹介されていました。仕入れは本部が一括で仕入れるのではなく、すべて現場の店長以下が、仕入れ、運送、陳列、販売と4役をこなしています。自分で仕入れた商品は売れ残らないよう必死に売り切ります。そして店舗の出した利益が店長、従業員に給料として還元される仕組みを取っているので、やる気の度合いが違っていました。

このエントリをはてなブックマークに追加このエントリをdel.icio.usに追加このエントリをLivedoor Clipに追加このエントリをYahoo!ブックマークに追加このエントリをFC2ブックマークに追加このエントリをNifty Clipに追加このエントリをPOOKMARK. Airlinesに追加このエントリをBuzzurl(バザール)に追加このエントリをChoixに追加このエントリをnewsingに追加

最新記事

不動産業界コラム

過去の記事

ページの先頭に戻る↑