2012年2月8日(水)
何故、頭に神田、日本橋の地名が付いているのか?
神田駅周辺には神田乗物町、神田紺屋町、神田神保町など頭に神田が付いている町名が多数あります。同様に中央区の日本橋界隈にも、日本橋室町、日本橋本町、日本橋小網町など頭に日本橋が付いている地名が多数あります。これはどうしてか?その謎に迫ってみます。
首都東京府は、明治22年(1889年)に東京東部(現在の23区があるところ)を、東京市15区+6郡部してスタートします。15区とは、麹町区、神田区、日本橋区、京橋区、芝区、麻布区、赤坂区、四谷区、牛込区、小石川区、本郷区、下谷区、浅草区、本所区、深川区。15区の回りはまだ農村部であり、荏原郡、南豊島郡、東多摩郡、北豊島郡、南足立郡、南葛飾郡の6群部としました(南豊島と東多摩は明治29年に合併して豊多摩郡)。東京15区の順番はパリ市を模して、中心の皇居から時計回りで“の”の字で数えました。
その次に大規模に行政区を編成したのが、昭和7年(1932年)で東京市が5郡部を新たに20区に昇格させて、合計で35区になります。
・荏原郡→品川区、荏原区、目黒区、大森区、蒲田区、世田谷区
・豊多摩郡→渋谷区、淀川区、中野区、杉並区
・北豊島郡→豊島区、滝野川区、荒川区、王子区、板橋区
・南足立郡→足立区
・南葛飾郡→向島区、城東区、葛飾区、江戸川区
第2次世界大戦真っ最中の昭和18年に東京府は東京都となり、戦後間もない昭和22年に旧東京市35区は、22区に再編されます(半年経ったところで板橋区から練馬区を分割して現在の23区に)。この時の行政区再編で、神田区と麹町区をまとめて千代田区ができ、日本橋区と京橋区をまとめて中央区ができます。ついでに港区は、芝区、麻布区、赤坂区がまとまってできました。
この時に、神田区、日本橋区に愛着を持っていた住民たちが、自分たちの区が無くなってしまうことに猛烈な反対運動を起します。これをなだめる為の妥協策が、旧町名の頭に神田を付けたり、日本橋を付けたりすることだったのです。千代田区、中央区と区は変わってしまったけど、ちゃんと神田、日本橋が残っている。これで何とか神田区、日本橋区の住民を説得し行政区の再編ができました。これが冒頭に書いた、町名の前に神田や日本橋が付いた理由なのです。
町を“まち”と読むか“ちょう”と読むか結構迷いますが、神田の場合はほとんど“ちょう”と読みます。例外は、神田小川町(おがわまち)と神田司町(つかさまち)だけです。“ちょう”と読むのは、町人町だったからと言われています。日本橋でも日本橋室町(むろまち)以外は、町は“ちょう”と読みます。やはり町人町だったからなんでしょうね。
追記1)都営新宿線「神保町」駅を出た靖国通り沿いに、“旧町名中猿楽町(現内神田神保町2丁目)”の町名由来が書いてありました。猿楽とは“能”のことで、武士を中心に江戸時代人気があったそうです。能を演じる役者たちが多く住んでおり、猿楽の演じ手が住む町として「猿楽町」の地名ができました。看板には“観阿弥・世阿弥の流れを受け継ぎ、観世座は江戸幕府から手厚い保護を受けていた。その家元観世太夫一座の人々の屋敷がこの界隈にあった”と書いてあります。
追記2)水道橋駅の南側は三崎町ですが、何故三崎町というか由来が書いてありました。“およそ400年前、江戸幕府が開かれるころまで、この界隈は三崎村と呼ばれていました。当時、現在の大手町から日比谷や新橋周辺は、日比谷入江と言う遠浅の海でした。三崎村はこの日比谷入江に突き出た土地の端にあったため「ミサキ」の名前が付けられたと伝えられています。やがて家康をはじめとする歴代の将軍が城下町として開発に力を注ぎ、入谷や湿地帯は埋め立てられました。そしてここは、大名や旗本の武家屋敷が建ち並ぶ町に変わり、江戸時代を通じて小川町と呼ばれていました。”
三崎町の由来の看板
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