2012年2月20日(月)
多摩ニュータウンの秘密
多摩ニュータウンに住み、多摩ニュータウン内でのコーポラティブマンション作りやコミュニティ形成作りをしている秋元孝夫氏(一級建築士)さんに、先日ご講義頂きました。
・東京と大阪を結ぶリニアモーターの新駅が橋本駅にできる。予定では2027年に名古屋まで開通。これができると品川駅の次が橋本駅で、名古屋、関西に行くのがぐっと近くなる。もちろん東京都心とも非常に近くなる。また小田急線は相模原まで延伸工事を進めながら、複々線工事をしている。これが完了すると、20分程度で新宿まで行けるようになる。このように交通の将来性はぐっと向上する。
・多摩ニュータウンは多摩市と思う人が多いが、実は八王子市、稲城市、町田市と4市にまたがっている。多摩市は主に昔の住宅都市整備公団(現在の都市再生機構(UR))が開発。一部を東京都供給公社。八王子市は東京都の開発が多い。稲城市は土地区画整理事業で開発が進行中。
・多摩ニュータウンの印象は、入居した人たちが40年くらい経って老人ばかりとなり、人口は減少していると思っている人が多い。実は民間の分譲マンションがまだ多く供給され、それに伴ってニュータウン全体の人口は増えている。但し多摩市に限るとマンション供給はほとんどないため、人口はやや減少に転じている。多摩市の動向と多摩ニュータウン全体の動向は異なる。
・1971年と今から40年前に入居が始まった多摩市は、住み始めて30年、40年経ち一気に高齢化が進んだ。昔は昼間人口が夜間人口より少ない街だったが、現在は同じくらいになりつつある。これは市内に働く人が増えたと言うことでは無く、定年となり家にいるようになったためと考えられる。
・団地内ではNPO活動はかなり盛ん。定年退職した男性も積極的に色々な行事に関わっている人が多い。料理教室やもちつき大会やお祭り。このイベントは誰が仕切ると長年の中で決まっており、仕切り役はその役を楽しんでこなしている。
・都営住宅は月額1万円で住むことができる。公団の賃貸は7万円、8万円なので、誰もが都営住宅に住みたがる。所得が低くないと入れないが、資産は考慮されないので、資産家の人がかなり都営住宅に住んでいる。安くて住み易い多摩ニュータウンの都営住宅は宝くじのようなもの。他の市町村からも都営住宅を目指して続々と引っ越して来る。
・マンションに住むことで一番健康で気を付けることは結露対策。断熱が悪いと冬場はかなりの結露が出る。結露が原因でカビが生え、ダニがわく。カビの胞子やダニの死骸が空気に舞ったりするので、それを吸い込んで病気になり易い。40年前、30年前の建物なので、断熱がしっかりできていないマンションが多い。
この結露対策として外断熱工事を行ったマンションがある。外壁にコンクリートパネルを張り、その間に断熱材を入れる。またサッシはペアガラス(2重ガラス)にした。こうすることで結露も無くなり、部屋の温度は3度上がり、暖房代の灯油が2/3程度に大幅に減った。冬でも暖かいマンションになったので、こんな住みやすいマンションは無いと大勢の住民に感謝された。外断熱の改修工事費は、通常の大規模修繕の2倍くらいだろうか。それでも直射日光、風雨を受けない外断熱はコンクリートの寿命を延ばし、結果長い目ではコストが安くなる。
・民間の単身者向けアパートの入居稼働率が悪化しその相談を受けた。ただの単身者向け需要は少ないので、共用のスペースを設け、コレクティブハウスにするようにコンサルティングを行っている。今までの形では需要が無いとしても、少し手を加えることで今までにない需要を作ることができる。
・多摩センター駅周辺は昔はゴミの共同溝があり、家庭ごみをエアシューターでゴミ集積所に送るシステムがあった。現在ではゴミの分別処理が当たり前のためこのシステムは使われていない。多摩センター駅そばに、ゴミ収集所がありこれも放置されている。今とは無用の長物となったゴミ移送の共同溝とゴミ収集所であるが、これを地域給湯暖房とコ―ジェネレーション発電所として使おうという計画を進めている。地域の発電設備を設け、発電時に出る熱を各戸に回すシステムだ。地中に通っている昔のゴミ移送共同溝は、熱を伝える絶好のインフラとなっている。
役人が作った無機質なニュータウンで呑み屋も無いと思いがちですが、街にはいたるところに赤提灯もあるそうです。知っているようで全く知らなかった多摩ニュータウンの実情でした。
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