2014年5月29日(木)

低価格ピザ店舗が続々開業

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 雑誌SAPIOで、「原価300円のピザが2500円で配達される仕組みがわかった」という記事を特集していました。

・現在では主要ピザチェーンだけで全国に約2000店舗、小規模店を加えると約4000の宅配ピザ店がある。売上シェア1位は「ピザーラ」で34.4%(売上高432億円、12年度見込み。全国552店舗)。以下、「ピザハット」が20.4%(同256億円、369店舗)、「ドミノ」が17.3%(同218億円、273店舗)と続き、上位3社でシェアの7割以上を占める

・Mサイズ(=直径25cm)で1800~2800円程度の価格帯が一般的。定番メニューのマルゲリータであれば、ピザーラが1890円、ピザハットが2200円、ドミノが1900円。、宅配ピザの食材原価は15~20%程度なので、300円から400円になる。この内一番原価が掛かるのがチーズで1枚分が120円から140円くらい。次が生地とソースで、80円から120円くらい。残りがトッピング代。

・配達にかかる人件費を売り上げの15~20%程度に抑えなければならない。そうなると時給1000円前後のアルバイトには1時間で平均6000~7000円を売り上げてもらわなければなりません。

・アメリカのピザハットのMサイズ(直径約30cm=日本のLサイズに相当)ベーシックピザの値段は8ドル(約800円)だが、日本では同じサイズとトッピングで注文すれば1600円と、実に2倍の価格になる。 

 結局宅配に掛かる人件費が、宅配ピザのコストのかなりを占めているということです。それなら宅配を止めてお店で食べてもらえば、もしくは持ち帰り方式にすれば相当に安く提供できるはずです。宅配を止めて、本場イタリアのように低価格で気軽にピザを食べられるお店。これを目指す4店に注目してみました。

1.吉野家系列の「ピッツァ ナポレターノ カフェ」

 吉野家ホールディングス傘下で、たこ焼きチェーンなどを運営するピーターパンコモコ。この会社が手がける激安ピザ店が「ピッツァ ナポレターノ カフェ」です。

 東京・杉並の東京メトロ新高円寺駅前が2013年10月に第1号で開業。外観に吉野家の面影は全くなく、イタリアの街角にありそうなカジュアルのレストランの雰囲気。但し入り口には「500円」の看板が表示され、価格勝負が強調されています。

 店に入ると入り口付近にピザ焼きの大きな窯があり、吉野屋だからと言って手を抜かないで本当に焼いているのが分かります。内装はグローバルダイニングのゼストのようにオールドエイジを演出しています。広さは約16坪で席数は24(カウンター6席、テーブル18席)です。 

2.オーディンフーズ

 ピザ宅配チェーン「10.4(テン・フォー)」を全国展開している会社の店舗です。(函館市、長谷川善一社長)は1~2年後をメドに、小型サイズで1枚525「円の低価格ピザの持ち帰り専門店を本格展開する。道内などに実験的に出した店舗で低コスト運営のノウハウを確立したうえで多店舗化すると、公言しています。 

3.センプレ・ピッツァ

 株式会社BuonaVita 2004年12月設立 荻窪、阿佐ヶ谷、高円寺と中央線沿線に出店。ここのHPには下記のように書かれています。

「日本のピッツァはカレーやラーメンのような国民食になりつつあります。しかし、本格的なナポリピッツァとなると国内での歴史はまだ浅く、価格が高いこともあり、その広がりは一部のグルメ・富裕層の方のみに限られています。
 ピッツァの本場、イタリア・ナポリではピッツァは特別なご馳走ではなく、誰もが気軽に食べられる手頃な食事として根付いています。ファストフードでありながら、安心安全の地元食材と職人の卓越した技術を使って調理する伝統的な「スローフード」の形を保っています。
 こうした食文化を日本にも根付かせることができないかと、2011年都内に「sempre pizza(センプレ・ピッツァ)」を開店いたしました。sempre pizzaはその名のとおり、本格的なナポリ・ピッツァを「いつでも」しかもナポリさながらの低価格で日本全国、多くの皆様に召し上がっていただくことを目指しております。」

 トマトソース、ニンニク、オレガノが入った「マリナーラ」が380円と一番安い価格となっていて、マルゲリータは530円。1枚の大きさは宅配のMサイズの25cm。店内で釜で焼いています。 

4.ナポリス(Napoli’s)

2012年に渋谷区神南、中野、自由ヶ丘、広尾、池袋西口、渋谷宮益坂を開業し、2013年以降は大阪、札幌、新潟、福井県敦賀と東京以外でも続々出店を拡大しているチェーン店です。ナポリス店のピッツァの作り方を公開している映像があります。ピッツァの皮を伸ばしてくれる機械。トマトソースを塗り、チーズをまぶしたら、その上に具材を載せ、窯で焼く。スピーディーに手際よく作っています。

 マルゲリータは、チーズシングルで350円、チーズダブルで500円。カールズバーグのグラスビールが500円、ワインも500円。

ナポリスのHPにも、下記のように日本の宅配ピザの価格を下げたいとの意思が書かれています。「日本の“ピッツァ”はなぜあんなに高いのだろうか?私たちは、本場の“ピッツァ”を本場の価格で提供していきたいと思っております。日本人が“ピッツァ”をいつでもどこでも気軽に食べることのできる主食にし、日本人の食文化が豊かになるように変えていきたい。」

 ナポリスの経営会社は株式会社 遠藤商事(Holdings)、遠藤 優介社長(1983年1月横浜市生れ)。2011年5月設立。飲食の戦士たちというネットの記事に遠藤社長が紹介されていますが、29歳にして壮絶な人生を歩んでいます。赤ん坊の時に親に捨てられ、寺の住職に拾われ育てられ、遠藤と言う家の養子に。小学校はようやく2年生から通い始め、たまたまやったサッカーのユースで才能を開花。中学生時代にイタリアセリエAのユースに加入。イタリアではプロ選手になれず、ナポリで食べたピッツァが美味しくてしばらくその店で修業。日本に帰ってからワイズテーブルのサルバトーレクオモで有名ピッツァ職人の大西氏のもとで働く。そして独立。http://in-shoku.info/foodfighters/vol340.html

  このような低価格ピザ店は今後ますます増えそうな勢いです。考えてみれば宅配ピザは滅茶苦茶高い価格だったですから、価格破壊は一気に進むのではないでしょうか。手軽にピザが食べられて、ビール、ワイン、スパークリングが飲めればこんな良い話はありません。

 

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