2014年8月17日(日)
沖縄の離島と自衛隊配備
2009年民主党政権になり、鳩山由紀夫元首相がぐじゃぐじゃにこじらせてしまった普天間基地移設問題。落としどころも何もなく、「最低でも県外」と言ったばかりに、沖縄県以外の色々な場所が候補に上がりました。その折、民主党最大の実力者だった小沢一郎氏が言った移転先が、沖縄県の「下地島」でした。下地島は、宮古島の西方約4kmにある島で、伊良部島とほとんどくっ付いています。
10年くらい前に宮古島に行った時、地元の方に伊良部島、下地島を案内してもらったことがあります。そこで驚いたのが、3000m滑走路のある立派な下地空港です。いくら公共工事で金を落とすと言ってもやり過ぎな空港です(1971年開港)。宮古島にも立派な空港がありますし、下地空港は当然旅客用では使えません。下地空港は、なんとジャンボジェット(ボーイング747)のパイロットが練習する空港として使われていました。巨大なジャンボ機が離陸、着陸を繰り返しており、真下からその巨体を見るのは圧巻でした。
そのジャンボ機も全て引退し、ジャンボ機の練習用需要は消失。現在では琉球エアーコミューターと海上保安庁が小型機訓練のために使用するだけとなっています。この下地空港を普天間の移転先にしたらと言ったのが小沢一郎氏だったのです。3000m滑走路がほとんど使い道のない状況ですので、かなり良い案だったと思います。
しかし沖縄本土復帰前の琉球政府との「屋良覚書」があり、琉球政府(沖縄県)の同意がない限り、下地島空港の軍民共用空港化はできないとされています。そこに空港があるからと言って、すぐに米軍や自衛隊基地を作ることはできないのです。
「もったいないなあ」と思いながらも、当然最初から下地島空港の軍民共用空港化は構想の範囲内であったことは窺い知れます。いざとなれば、沖縄離島の空港は軍事利用を可能にする。何も使っていない下地空港はその筆頭です。
日本の最西端、台湾島まで約110kmに与那国島があります(尖閣諸島までは約150km)。ここにある与那国空港も従来の1500m滑走路から、2007年に2000m滑走路に延長しました。与那国島も島を二分して、自衛隊誘致賛成派と反対派で争っていました。これ以上進む過疎化を止めるには自衛隊を誘致して住民を増やし、かつ莫大な地代を徴収し、島を活性化するというのが賛成派です。
そして2014年3月に、与那国町と防衛省とで正式に町有地約21haについて土地賃貸借契約が締結されたとニュースに出ていました。交渉経緯を読むと、防衛省は年間地代1.5億円と言っていたのを、与那国町が年間地代10億円と吹っかけたという記事も出てきます。今回の正式契約でいくらの地代で決まったかまでは明らかにされていません。
防衛省の計画ではここに150人規模の監視部隊を置く。工事は2017年度末までに完成ということです。現在は、尖閣諸島での中国機領空侵犯に対するスクランブル発進は那覇空港から飛んでいます。距離で約420km、時間にして20分強掛かっているそうです。これが航空自衛隊が与那国に配備されれば、距離が約3分の1ですので、7分前後で到着できます。ただ、現在の計画はあくまで監視部隊ということで、戦闘機の配備までは無いようです。
2014年8月の新聞記事では、鹿児島県奄美大島町でのミサイル配備の報道がされていました。「武田防衛副大臣が8月12日、鹿児島県の奄美大島を訪れ、奄美市長、瀬戸内町長と会談し、約550人規模の陸上自衛隊警備部隊の受け入れを要請した。武田氏は地対空、地対艦ミサイルの配備を希望している。現地ではこの2点について基本的に同意を示している。奄美市には約350人の陸上自衛隊と中距離地対空ミサイル、瀬戸内町には約200人の陸上自衛隊と地対艦ミサイルが配備される予定だという。」という内容です。
中国はウクライナから廃船予定だった空母を買い取り、「遼寧(りょうねい)」として改造し就航させています。乗員約2000人、推定搭載機67機。相沢幸悦氏の「軍事力が中国経済を殺す」や、週刊ダイヤモンド14年6月21日号「自衛隊と軍事ビジネスの秘密」を読むと、
・中国は遼寧に続き、今後も空母を3隻建造する。4隻の空母運用費だけでも年間数兆円かかる。
・空母だけを作っても意味はなく、潜水艦、護衛艦など含んだ艦隊として軍事的には機能する。
・空母の建造には1兆円から2兆円かかるが、その運用にはさらに天文学的な財政資金が必要になる。
・空母の戦闘的価値は以前ほど大きくない。米国や英国は空母の価値を見切り、減少させる動きにあるが、中国は逆に増加する動きにある。
と書いてあります。
日本としては莫大な維持コストが掛かる空母などには見向きもせず、中国が嫌がる戦略(不沈空母である離島を基地化)を着実に実行していくことが、一番効果的であると考えています。
追記 旧伊良部町では、2005年3月に開催された町議会で、下地島空港への自衛隊誘致の請願を賛成9反対8で可決したことがあると知りました。本土防衛というより、自衛隊誘致による経済効果を狙ったとの意見もあります。与那国島での経済効果(数億円の地代が入って、自衛隊員が暮らすことで島も潤う)が数年後に実現すると、賛成派の勢いが増して来るのではないでしょうか。
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