2015年10月18日(日)
ハーグ条約違反の東京大空襲
今年は戦後70年ということで太平洋戦争が色々なところでクローズアップされました。7月に向島界隈を訪ねた折、牛島神社の近隣に「すみだ郷土文化資料館」がありました。ぶらっと入ると、東京大空襲の写真が期間で展示中です。台東区、墨田区辺りは東京大空襲で最もひどくやられた地域で、一面焼け野原となっている写真が多数ありました。70年以上経った今も無残で酷い光景です。
先日読んだ本が「戦犯を救え BC級横浜裁判秘録」清水聡著、新潮文庫。本を読んで知らなかった事実を知ったのが下記内容です。
・BC級戦犯とされた被告総数は約5700人。この内死刑とされた人が984人。実際に900人を超える被告が絞首刑となった(死刑率17%)。A級戦犯容疑での逮捕者は計126名で絞首刑となったのが東条英機、広田弘毅ら7人。A級戦犯に比べても数も死刑率も圧倒的に上回る過酷な扱いだった。
・昭和33年放映のフランキー堺主演のドラマ「私は貝になりたい」も、BC級戦犯とされた一般人の悲惨な物語。平凡な床屋だった主人公が戦地に行き、上官の命令で捕虜となった米兵を殺すように命じられる。実際には殺さず傷つけただけで終わり、終戦となり再び故郷で理髪業を営んでいた。ある日MPがやってきて、BC級戦犯容疑でいきなり逮捕。理不尽な裁判で死刑となったというストーリー。
・無差別爆撃は、ハーグ陸戦法規など国際法に違反している。ハーグ条約付属規則25条には「攻守せざる都市、村落、住宅または建物はいかなる手段によるもこれを攻撃または砲撃することを得ず」と定められている。これは第二次世界大戦中も同じであった。
東京大空襲も広島・長崎への原爆投下も、その他日本国中への空襲がハーグ条約違反だと言うのです。本当だろうか?そんな国際条約違反が堂々と行われていたのか?日本へ原爆投下したから早く降伏することになって良かったんだ的なことを米国は主張し、条約違反のことは一切口にしません。8月に終戦決定までを描いた映画「日本の一番長い日」を見ましたが、原爆を投下されてもなお本土決戦を主張する帝国陸軍がいたのは事実です。でも、それと国際条約違反は別物です。
ウィキペディアで見るとハーグ条約とは“オランダのハーグで行われたハーグ国際司法会議において締結された国際司法条約の総称。陸戦の法規慣例に関する条約、通称ハーグ陸戦条約は戦時国際法の一つで1899年に締結され1907年に改定された”と書かれています。
“首都や他の大都市には軍隊が常駐している。従って部防備ではない。一般民家でも工場となり、兵器のボルト・ナットを作っている可能性がある。だから米軍の無差別爆撃は正当化されるているんだ。”的に書いてある説明文もあります。
しかし、ネットを見てもほとんどハーグ条約違反に関する記述が見当たりません。1件だけ弁護士の林治氏による「東京大空襲訴訟」に関する記述がありました。
“東京大空襲は無防守都市に対する無差別攻撃であったので、明らかに国際法違反である。そのため東京大空襲の被害者はハーグ陸戦条約3条に基づき国際法違反の空襲を行ったアメリカ政府に対して損害賠償請求権がある。しかし、日本政府は対日平和条約により空襲被害について、国際法上の外交保護権を放棄した。 これにより、東京大空襲の被害者はアメリカ政府への損害賠償請求権の行使が著しく困難または不可能になった。”
“この日本国が米国へ空襲被害を放棄したことを前提に、日本国政府へ空襲被害者への損害賠償を求めた裁判を2007年に提訴。2012年に言い渡された高裁判決を不服として、上告・上告受 理申立をしたが、2013年5月8日に上告棄却、上告不受理の決定がなされた。” と言う内容です。
http://www.news-pj.net/npj/2008/tokyodaikushu-20080111.html
そうか、そういう裁判もあったのか。でも、裁判自体ほとんど話題にされませんでした。最高裁棄却が2年前なので覚えていても良さそうなのが全く記憶にありません。原告の人達の本心は、「東京大空襲や原爆投下は本当はやってはいけない条約違反だったよね」という歴史的事実が欲しかったのではないでしょうか。
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