2016年9月24日(土)
青森駅前の再開発ビル「アウガ」
一時期はコンパクトシティの代表例と言われ、地方都市の再開発成功例として名前が挙がっていた青森駅前の商業ビル「アウガ」。今年になってから債務超過問題で揺れています。9月に出張で青森に行った折、アウガを覗いてみました。アウガの概要は下記のとおりです。
青森駅前の再開発ビル「アウガ」
・アウガの正式名称は「Festival City AUGA」。津軽弁の「会うが」(標準語で「会おうよ」)の意味も含まれている。アウガは2001年1月に第三セクター企業「青森駅前再開発ビル」経営の複合商業ビルとして開業。
・元々は低層のバラックみたいな魚市場があった場所で、市場そのものは地下1階に再入居している。現在の構成は、地下1階が「アウガ・新鮮市場」、1階から4階までが商業施設、5階から6階が「青森市男女共同参画プラザ・カダール」、6階から9階が「青森市民図書館」となっている。
・当初はデパートを誘致しようとしたが上手く行かず、商業ゾーンは独自のファッションビル業態となった。15年前の開業当初は来客も多く繁盛したものの、イオンなどの郊外型大規模ショッピングモールも次々でき、売上は年々減少。
・2008年には「青森駅前再開発ビル」の債務を青森市が買い取り、青森市が運営主体となっていた(金融機関から青森市が債務を買い取るということは債務保証をしていたのでしょうか)。2011年の東北新幹線「新青森駅」が青森駅と離れた場所に開業し、青森駅の地位が低下。商業ゾーンの空室率が1割を超えてしまった。2013年度の年商は約16億円、全館での集客数は242万人(と言っても、ほとんどが図書館と地下1階の市場利用者)。
・2015年度決算において、減損評価を行ったことで約23億8,500万円の債務超過となり経営破綻が判明。立て直し策として、地下1階以外は青森市役所の一部を移すなど、全館公共施設化での再生を発表(青森市役所の老朽化が進んでおり、ちょうど建て替えが計画されていた)。また地権者床を青森市が買い取り、青森市に対する「青森駅前再開発ビル」の債務は、土地と建物で代物弁済させ不動産全体を青森市が所有する計画となっている。
・10月15日に青森市長鹿内博氏は経営破たんの責任を取る形で辞任を発表し、今後市長選が行われる。しかし、アウガの経営問題は現市長の責任というよりは、前市長・佐々木誠造氏(1989年~2009年までの20年間市長)や市議全体にあるとの指摘も多い。
駅前の中心市街地が衰退しているのは、ほとんどの地方都市に共通のことで全く珍しくありません。青森市の場合は建て替え予定の青森市役所一部に使えるのであれば、悲劇的な結末にならないのでまだ良かったと言うところです。
地下1階の魚主体の市場は、えらく期待して見に行ったのですが少しがっかりでした。以前の青森駅前の魚市場は、魚がすごい新鮮で市場全体に活気があると聞いていたので。売っている人の高齢化が進んでいるためか、それともお客さんが少ないせいか、全体的に沈んだ感じです。
地下1階のかなりを占めている「りんご箱」というレストランがあります。りんご箱を逆さにしたテーブルに、古民家風の内装で地元料理と地元日本酒を楽しんでもらう。津軽三味線のライブもあり、観光客を呼び込もうというコンセプトのようです。
このりんご箱もほとんどお客さんは入っていませんでした。表の案内板に一番人気と書いてあるのが「極(寿司12貫) 3300円」。この価格だと地元の人は来ないし、賑わっていなければ観光客も入りづらい。地元客がバンバン来るお店だから、観光客もどんどん来るということを忘れているようです。多分、店舗開発コンサルタントの言うことをそのまま役所の人間が忠実に実行した結果なのでしょう。
ここで参考になるのは、高知のひろめ市場です。市場の中にある高知の地元料理が食べられるフードコートなのですが、いつも地元の人で一杯です。混む理由は、安くて、旨くて、楽しい場だから。地元の人が一杯で高知弁が飛び交うので、観光客は余計楽しくなります。
アウガのりんご箱も今後どう運営を続けていくか思案中なら、観光客にフォーカスするのではなく、地元の人に来てもらうという視線で再構築すべきです。青森の美味しい食材を美味しい料理でリーズナブルな価格で出せば、高知のひろめ市場のように地元民で一杯になるはずです。
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