2010年7月17日(土)
6-4 ホテル経営(リース、MC、FC)
本章のバジェットホテル編でも触れましたが、日本全国でものすごい勢いでホテルが建設され、開業しています。ホテル業界に詳しい知人の設計士は、この理由をこう言います。
「地方都市に行けば有効利用の手段が無いんですよ。オフィス作ったってテナントは入らないし、賃貸マンション建てたって建築費回収できるほどの賃料は取れないでしょう。地主さんが土地を有効利用しようとすると、必然的にビジネスホテルになってしまうんです。この10年は、バジェットホテルを運営する会社がどんどん大きくなって、チェーン展開を進めました。でも宿泊需要はそれほど伸びていないのですから、ホテル客室数ばかり増えて経営は楽ではありません。既存のホテルチェーンは、低価格競争に太刀打ちできなくて、閉鎖してしまうホテルも相当増えています。」
それでは、地主さんが土地を有効利用してホテル経営をする時には、どういう手法があるでしょうか。ホテルの経営方法は、下記のように分類されます。
①自主経営型:ホテルチェーンに属さず、自前で経営する。ホテルブランドを借りるロイヤリティ費用は掛からないが、肝心の宿泊客の集客が楽ではない。中規模以下だと自主経営型も多いが、150室を超えるようなホテルになると最近は少ない。リゾートホテルの場合だと、必ずしもチェーンホテルのメリットは無いので、自主経営を取っているホテルは多い。
②リース型:ホテル運営会社に建物を長期賃貸し、固定収入または固定収入+歩合収入をもらう。ホテル経営リスクは運営会社が取り、所有者は運営リスクを軽減できる。
③MC型(management contract マネージメントコントラクト):運営委託の方式。運営会社がスタッフを揃え、運営ノウハウを提供する。但し経営は、建物所有者が行う。運営会社は、マネージメントフィーとして売上の3%~5%を取り、一定成績以上を上げた場合は、インセンティブフィー(ボーナス)をもらう。インセンティブは、GOP(gross operating profit) の5%くらいが多い。GOPは、売上から運営コスト(人件費、原材料費、リネン費等)を差し引いた営業利益を言う。
④FC型(フランチャイズ・コミッティ):ホテルのブランド名を借りて、自分で運営するのがFC型。FC本部は、経営ノウハウは提供するが人は派遣しないことが多い。FC本部が取るFC費用は、売上の2%くらいが多い。当然のことながら、ホテル所有者が経営責任から運営責任まで負うことになる。
最近数多く建っているバジェットホテルタイプでは、ほとんどがリース契約となっています。経営リスクの高い地方都市においては、地主さんの選択として当然だと思います。多額の費用を投じてホテルを建築し、運営した結果思ったような営業成績が残せず、赤字ばかりが残るのでは目も当てられません。少なくともリース型であれば、経営リスクは運営者(オペレーター)に帰属させることができます。
一昔前のホテル運営契約は、リース型が主流ではあるものの、MC型、FC型もかなりのシェアを占めていました。ホテル運営会社もリース型では、100%自分のところの経営リスクですので、いまいち自信のない地域ではMC、FCにしてリスクヘッジを図りました。それでも地元の名士たちには、ホテルを持つことが一種のステイタスでもあり、リスクを背負ってMC型、FC型でホテル経営に参画したのです。この手のホテルが築後20年、30年を迎え、多額の設備更新費用を捻出できずに、またバジェットホテルとの激しい価格競争で閉鎖に追い込まれる例が増えているのです。
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