2011年2月13日(日)

朱鷺(トキ)の話し

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 佐渡に行って、大空を羽ばたくトキを見てきたので、トキについて調べてみました。これだけ覚えれば、かなりのトキ通になれるはずです。

・トキは、かつては日本に広く棲息していたが、美しい羽を取る目的で乱獲され、大正時代に絶滅されたと言われていた。昭和初期に佐渡島でトキの生息が確認された。昭和27年3月に天然記念物に指定。昭和40年頃から人工的飼育が試みられた。その後昭和56年に最後の野生のトキ、5羽が捕獲され、人工的に繁殖させようと試みられた。しかし、必死の保護も虚しく平成15年10月、佐渡で最後の日本産の“きん”が捕獲後35年で死んで、日本産のトキは途絶えた。

・中国四川省で保護飼育されていたトキが、平成11年に中国から2羽が贈呈された(翌年さらにもう1羽)。このトキが産卵し、現在順調に個体数が増えている。

・大きさは、体長約76cm、羽を広げた幅約140cm、重さ1.5kg~2kg。1日に体重の1/10の200gくらいの餌を食べる。朱鷺には歯が無いので(鳥だから当たり前)餌を丸呑みする。

・学術名は、「ニッポニア・ニッポン」。如何にも日本にしかいなさそうな名前だが、これは江戸末期シーボルトが本国に紹介する時に付けた名前。日本以外、ロシア、韓国、中国にも存在しているので、日本固有の鳥では無い。シーボルトが中国から紹介していれば、チャイニーズ・チャイナになっていた可能性もあった。

・トキの特徴は、外見は真っ白だが、羽を広げると朱色がかった濃いピンク色(薄いオレンジ?)で、この色を朱鷺色と言う。

・餌は、田んぼに生息するドジョウ、ミミズ、タニシ、カエル、沢ガニ、フナ等の小魚。野生のトキを繁殖させるため、佐渡では減農薬・減化学肥料の田んぼを増やし、トキの餌が増えるようにしている。また、冬場でも生き物(食べ物)がいるように、田んぼに水を張り(冬期湛水:とうきたんすい)、江(え:田んぼ内の水路・堀)を作り、ドジョウ、小魚、タニシなどが生きられる工夫をしている。

・佐渡トキ保護センター(昭和42年開設、環境省所管):ここでトキに産卵させ、人工で孵化し、トキを育てる。トキは卵を必ず4個産む習性がある。職員が2個卵を取ると、再び卵を2個産んで4個にする。再び職員が卵を取り、トキに産卵を促す。これを繰り返して、大体1羽のメスに12個くらいの卵を産ませる。最近保護センターのトキの体調が悪くなってしまったが、好物のドジョウばかり食べていたのでビタミン不足になってしまったため。

・佐渡トキ野生復帰ステーション(環境省所管):保護センターとは別の場所で、保護センターよりも広く大きいケージの順化センター(50m×80m×高さ15m)等の施設を持つ。総面積約22ha。ここで飛ぶ訓練をし、できるだけ自然に近い環境で慣れさせる。餌の取り方も、田にドジョウなどを放して、トキが探して食べるようにする。最初、数分しか飛べなかった朱鷺が、訓練を経ることでやがて長時間飛べるようになる。昨年テンが侵入し、トキを殺したのは順化センターでの出来事。今では、テンが入れないように対策をした。

・平成22年9月時点の飼育数は佐渡トキ保護センターが115羽、佐渡トキ野生復帰ステーションが34羽、多摩動物公園が10羽、石川県いしかわ動物園が12羽、合計171羽となっている。佐渡の保護センターだけで、鳥インフルエンザ等の病気が発生すると全滅してしまうので、それを避けるために離れた場所で育てている(東京にトキがいるなんて知らなかった!)。つい最近、佐渡トキ保護センターで飼育中の4羽が、新たに島根県出雲市トキ分散飼育センター移送された(出雲は4カ所目の飼育センター)。

・平成22年は、佐渡トキ保護センター、野生復帰ステーション、多摩動物公園及びいしかわ動物園で、計21組のペアで繁殖に取り組んだ。繁殖のペアは、できるだけ血の遠いオス・メスを組み合わせる(自由恋愛禁止)。結果、合計149個の産卵があり、このうち59羽が順調に成育している。

・第1次放鳥:平成20年9月に10羽を佐渡で放鳥(人工的に育てた朱鷺を自然に返す)。この朱鷺は秋篠宮夫妻が式典に参加。なかなか飛び立たないことが予想されたので、箱の後ろに穴を開けておき、後ろから突っついて飛ばせたとのこと。

・トキにはGPSを付けて居場所が確認できるようになっている。但し、電池節約のため、3日に1回短い時間だけ交信する。従って今時点の正確な位置は知ることができない。第1次では肝心のメスが、佐渡を離れて本州に渡ってしまった(放鳥時のパニックが原因とも?)。

・第2次放鳥:平成21年9月に20羽が放鳥。今度は慌てず、仮設ゲージから自然に出て行くようにした。この第2次放鳥の朱鷺は、第1次と違って群れで佐渡で生活するようになった。

・第3次放鳥:平成22年3月に放鳥予定のトキ10羽が、順化センター訓練中にテンに襲われ、9羽が殺された。11月に改めて14羽が放鳥された。

・第4次放鳥:平成23年3月の予定。

・平成22年9月時点で、放鳥され生存が確認されているトキは、合計26羽(放鳥合計は44羽)。平成22年4月に産卵が確認され、自然界で34年振りのひな誕生が期待されたが、親鳥が卵を孵化しないで巣を離れてしまったため、ひな誕生とはならなかった(親鳥が離れてしまったので、カラスに卵を食べられた)。

・地元農家も、また米が喰われると言う感じで、当初は協力的でない人も多かった。そういう農家の田にも放鳥したトキが訪れると、うちの田んぼにもトキがやって来たと、途端にファンになっていった。

・朱鷺を守る田んぼ(減農薬、化学肥料を減らす)として、佐渡市では平成22年度で660名の農家が参加している。この田んぼのブランドとして「朱鷺と暮らす郷(さと)づくり」(朱鷺認証米)の米を出荷している。イトーヨーカ堂が前面的にバックアップしてくれて、東京でも買うことができる。

・新潟県では、村上、魚沼、新潟一般米、佐渡の4ブランドの米がある。他の地区のブランド米は売上を落としているが、佐渡のお米は「朱鷺と暮らす郷(さと)づくり」のお陰で売上を伸ばしている。農家もトキを守るための取り組みが、米が高く売れるという経済効果を生みだしたことで、余計トキに関心を持つようになっている。1月16日NHK放送の「田んぼにトキが舞いおりる。佐渡生きものと共生する米作り」でも取り上げられていました。平成22年度は約1200haまで減農薬(50%以上農薬を減らす)の田んぼが拡大しています(佐渡市農林水産課)。

参考)佐渡市農業振興課「朱鷺と暮らす郷づくり」認証制度のご案内

http://www.city.sado.niigata.jp/eco/info/rice/index.shtml

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