自然再生エネルギーの発電稼働率と供給能力

都市鑑定アドバイザリー（株） 不動産鑑定士　田中祥司

　電力発電の話を聞いていて良く分からなかったのが、発電量の話しです。原子力発電所１基が１００万ｋｗで、風力発電が１基２０００ｋｗ。それなら、原発１基を代替えするのに、風力５００基建てれば良いかというと、そうでは無いというのです。何故そうならないか。
　これは、どの程度効率的に動くか、稼働率の問題だったのです。火力系（石炭、石油、ガス、原子力）の発電施設は、動かそうと思えば連続して稼働し続けることができます。これらの現実の稼働率は、７０％前後と言われています。
　これに対して自然再生エネルギーの稼働率は、
・太陽光発電　１２％（１日に約３時間）
・風力発電　　２０％（１日に約５時間）
・地熱発電　　７０％（１日に約１７時間）
地熱は火力系と遜色ありませんが、太陽光（ソーラーパネル）、風力はかなり見劣りします。

　そもそも発電量のキロワットは、キロワットアワー（ｋｗｈ）で、１時間当たりの発電量のことです。風力発電１万ｋｗ（２０００ｋｗが５基）の発電所では、
　１時間あたりの発電量　　１万ｋｗ
　１日の発電量　　　　　　１万ｋｗ×２４時間×稼働率２０％＝４．８万ｋｗ
　１年間の発電量　　　　　４．８万ｋｗ×３６５日＝１７５０万ｋｗ

　これが同じ自然再生エネルギーでも、高稼働の地熱発電の場合だと
　１時間あたりの発電量　　１万ｋｗ
　１日の発電量　　　　　　１万ｋｗ×２４時間×稼働率７０％＝１６．８万ｋｗ
　１年間の発電量　　　　　１６．８万ｋｗ×３６５日＝６１３０万ｋｗ

　当たり前ですが稼働率の差である３．５倍相当、年間発電量が優れています。従って１時間当たり何ｋｗだけで見るよりは、１日とか１年間の発電量で比較しないとあまり意味をなしません。

　また”何世帯の需要を賄える“と言うのも、注意しないといけません。１世帯と言っても、単身者と４人家族では全く使用量が異なるからです。日本の総人口１．２７億人に対して、総世帯数４９０６万戸ですので、日本の平均世帯人数は　”約２．６人“　になります。
　色々な資料を見て計算すると、１世帯（２．６人家族）の電力使用量平均値は、
“年間３５００ｋｗ“を基に計算しています。ただこれは、２．６人家族の平均ですから、４人家族であれば、３５００ｋｗ÷２．６人×４人＝５４００ｋｗ（約１．５倍）となります。
　風力発電所１万ｋｗの場合で、何世帯が賄えるか計算してみます。１年間の発電総量を前述の１７５０万ｋｗを使うと、１７５０万ｋｗ÷３５００ｋｗ／世帯＝５０００世帯となります。

　それに比べて原子力発電所１基１００万ｋｗの場合だと、稼働率６５％として（２００８年度実績が５８．０％、２００９年度実績が６４．７％）下記のようになります。
１時間あたりの発電量　　１００万ｋｗ
　１日の発電量　　　　　　１００万ｋｗ×２４時間×６５％＝１５６０万ｋｗ
　１年間の発電量　　　　　１５６０万ｋｗ×３６５日＝５７億ｋｗ
５７億ｋｗ÷３５００ｋｗ／世帯＝１６３万世帯
　そうか、１００万ｋｗ級原発１基で、１６３万世帯、４２０万人の家庭電力を賄えてしまうのか！こんなに効率が良いのなら、原発に走ってしまった気も分かります。

　これを風力発電で代替えするには、１６３万世帯÷５０００世帯／風力１万ｋｗ＝風力３２６万ｋｗの設備が必要になります。２０１０末の日本の風力発電総量が２４４万ｋｗ弱ですので、原発１基弱の計算です。風力発電業界団体の２０２０年度の目標値が７６０万ｋｗですので、これでようやく原発２基分程度になります。
　原発に替わる電力発電の道は相当困難ですが、少しづつ再生エネルギーを増やしていくしか無さそうです。

追記１）５４００ｋｗを前提とすると、２２円／ｋｗ平均とすると、電気使用量だけで年間１２万円、月額１万円くらいになります。これに月額の基本料金が５０アンペアで１３６５円、６０アンペアで１６３８円加わります（東電の計算方法では、月１２０ｋｗまでが１７．８７円／ｋｗ、３００ｋｗまでが２２．８６円／ｋｗ、３００ｋｗ以上が２４．１３円／ｋｗ、これに深夜電力割引等がある）。この計算よりはちょっと多いですが、まあ概ね間尺には合います。

追記２）原発１基１００万ｋｗで慣らされてしまいましたが、ちょっとした専門的解説だとメガワット（Ｍｗ、１００万ワット、１０００ｋｗ）、ギガワット（Ｇｗ、１０億ワット、１００万ｋｗ）を使うことが多いようです。ウィンドファームの風力発電所は２０Ｍｗから５０Ｍｗの規模で、原発１００万ｋｗは１０００Ｍｗと表されます。