2011年12月27日(火)
中世ヨーロッパ「伊万里」の大ブームとマイセンの台頭
今回も3回目の有田焼の話しです。
有田駅南方約400mに「佐賀県立九州陶磁文化館」があります。英語表記はCeramic Musiumで、英語で言えば磁器も陶器もセラミックです。ここを訪ねると、1600年代、1700年代の西欧王侯貴族に有田焼(通称「伊万里」)が愛されていたことが分かります。伊万里は大変高価なもので、金、銀と同価値で流通したと解説されていました。元々は中国製の磁器が西欧に輸出されていたのが、明から清になる政情不安の時期で輸出が滞り、そこで日本の有田焼が代わりに輸出されたそうです。
ハップスブルク家のマリア・テレジアは、シェーンブルグ宮殿に“漆器の間”という日本の漆器、焼き物のコレクションルームを持ち、晩年は一番そこを愛用したそうです。伊万里の器、花瓶が数多く置いてあります(博物館での展示は写真)。
西欧貴族にとって古伊万里は金銀財宝と同じ価値を持つ富と権力の象徴でした。王侯貴族や裕福な商人は、東洋貿易の中心であるオランダ船が入港するアムステルダムに陶磁器専門の買付代理人を置き、争って磁器を買ったそうです。購入した伊万里焼を「磁器の間」を設けては、壁面を埋め尽くすように床から天井に至るまで磁器を展示しました。この棚を「ポーセレン・キャビネット」と言い、来訪客に自らの権力・財力を誇示したのです。
古伊万里にとって重要なパトロンだったのがドイツの貴族たちです。17世紀後半から18世紀前半の有田焼が最も多く残っているのもドイツで、その当時大量に持ち込まれました。ドイツのザクセン選帝侯アウグスト2世が、何とかして伊万里に近い焼き物を作らせようと、若干19歳の錬金術師ベドガーを監禁して白磁器を作ることを命じました。
ベドガーが長年の研究の末、1350度から1400度と言う高温で焼くことを発見。その後もいくつかの重要な発見を積み重ね、1709年にヨーロッパで初めて白磁器を完成させます。マイセンの工房がその技法を習得し大量に生産を始めると、マイセンが欧州市場を席巻。その結果、欧州での有田焼の大ブームはその後下火になっていきます。マイセン公式HP「マイセン絵物語」http://www.meissen-jp.com/index.php?id=9
有田焼の陶祖・李参平が目指したのが明の景徳鎮(けいとくちん)。ドイツのベドガーが目指したのが、李参平が作り上げた有田焼。なかなかロマンのある陶磁器の歴史です。
追記1)香蘭社、深川製磁:デパートの陶磁器売り場でも良く目にする香蘭社と深川製磁。有田の街の有名磁器店ですが、この2社は元々親戚同士だったそうです。銀座6丁目14番10号に香蘭社のビルができました。定礎板まで有田焼でできています。http://www.koransha.co.jp/shoplist/tokyo.html
上有田の香蘭社本店外観
上有田の香蘭社本店内部
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