2012年10月17日(水)
住友本家と京都の庭園
住友御本家の財産を運用管理する会社があります。住友グループ中核の鉱山、商事、不動産、生命などから出向者が集まり、住友家の土地を有効利用し、その他に所有する美術館、庭園を管理しています。
六本木1丁目に持っていた土地は住友不動産が地域一帯を再開発し、「泉ガーデンタワ-」が2002年6月に完成しました(六本木一丁目駅直結、地上45階建)。資産管理会社はここに美術館「泉屋(せんおく)博古館別館」を所有しています。住友家のコレクションを収蔵しており、岸田劉生をはじめとする近代絵画のほか、茶道具、近代陶芸が中心(本館は後述の京都東山)。
住友家のそもそもの発祥は、四国の別子(べっし)銅山です。別子銅山は、愛媛県新居浜市の山麓部にあり、1690年(元禄3年)に発見され、1973年までに約280年間に70万トンの銅を産出しました。280年間ずうっと住友家が経営し(住友金属鉱山)、銅山で儲けた資金で製鉄、金融、保険、商社へと発展させていったのです。従って銅山事業が住友家の大切なルーツであり、銅製品に対しては思い入れが人一倍強いわけです。その集大成が京都東山にある美術館泉屋(せんおく)博古館です。住友家第15代当主の住友春翠が、明治から大正にかけて収集したコレクションで、特に中国古代青銅器が所蔵品の中心です。
美術館に行くと、中国の銅コレクションが多いのですが、4000年前くらいの銅鏡や銅器が多数置いてあります。特に銅鏡はピカピカに輝いており、まさに鏡で顔を映し出します。銅は表面は緑青で錆びますが、鉄に比べれば強く数千年経っても古さを感じさせません。
以前一度美術館に隣接してある庭園「有芳園(ゆうほうえん)」を拝見させてもらったことがあります。京都東山の麓鹿ヶ谷の住友家別邸だった有芳園は、東山を借景として見事な日本庭園です。年に一度行われる「祠堂祭」には、住友直系グループの社長や会長、相談役といった面々が集まるそうです。
小川に掛かっている2mくらいの橋がありますが、数年前に作ったような銅製の橋です。いつごろ造った橋ですか?と聞くと、100年以上前の橋との回答でした。管理も良いのでしょうけど、銅という金属の持つ素晴らしさを認識できました。
有芳園は、一時期住友家の管理を離れてしまった時期があります。戦後すぐにGHQに接収され、米軍の管理下となった数年間です。その間に松の木が伸びすぎ、東山の借景との微妙なバランスが崩れてしまったというのです。もちろん私には見事な庭園にしか見えませんが、有芳園を管理している庭師さんに言わせると、この数年間で崩れてしまった庭木のバランスは元に戻らないのだそうです。
有芳園を管理しているのは、小川 治兵衛(じへえ)氏で、代々同じ名前で、現在の方は第10代目です。特に7代目の方が有名なようです。京都の有名庭園のかなりは、小川 治兵衛管理となっています。東京では、北区の古河庭園の庭も管理しています。
追記)住友家は代々銅商を営み、大阪に居住し「泉屋」の家号を用いたそうです。これで関連会社に“泉”を付けるのが理解できました。住友御本家の資産管理会社は住友成泉ですし、不動産会社では、住友銀行系の銀泉、泉友総合不動産などがあります。泉を上下に分解すると、白と泉。これから住友グループの社長会は、白水会と呼ばれています。
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