2012年11月12日(月)
千葉県佐倉にある順天堂医学部の原点
成田山の帰りに佐倉に立ち寄り、堀田家住宅を見学しました。佐倉藩の最後の藩主であった堀田正倫の邸宅として、1890年に建築されました。江戸時代までは各藩の殿様は一国一城の主でしたが、明治維新後は住んでいたお城から出て行かねばならず、自分たちが住む邸宅を城外に構えます。堀田様も現在の堀田家住宅を普請(建築)し、時代劇に出てくるような大きい屋敷を構えました。
贅を尽くした和風建物で見ごたえのあるものですが、その後日産財閥の手に渡り、暫くは疎開の学校として利用されていたと説明を聞きました。現在では敷地の大半は、高齢者の特別養護施設の「佐倉厚生園」として使われており、運よく残っていた堀田家住宅を修復。平成11年秋に大規模な補修復元工事を終えました。
平成18年7月には、住居部の玄関棟・座敷棟・居間棟・書斎棟・湯殿および土蔵、門番所の7棟が、「旧堀田家住宅」として国の重要文化財(建造物)に指定されました。江戸の香りが漂う堀田家住宅は貴重であり、NHKの「坂の上の雲」のロケも行われたそうです。
その堀田家住宅から徒歩15分くらい離れたところに、順天堂大学発祥の「旧佐倉順天堂」が残されており、ここも見学できます。順天堂大学のHPを見ると、
・1838年 佐藤泰然が江戸薬研堀(中央区東日本橋2-6-8)に蘭方医学塾「和田塾」を開設。この年をもって順天堂開学の年とする。
・1843年 「和田塾」江戸より佐倉に移り、医学塾「順天堂」を開設する。「日新の医学、佐倉の林中より生ず」と謳われる。
・1873年 佐倉より下谷練塀町九番地(JR秋葉原駅付近)に「順天堂医院」を開院し、順天堂医学塾を継承する。
・1875年 下谷練塀町より湯島・本郷(現在地)に移転し、順天堂医学塾を継承する。
と書かれています。江戸末期から明治初頭の約30年間は佐倉に蘭方医学塾があったのでした。
以前日本テレビの「秘密の県民ショー」で、千葉県佐倉の人は “西の長崎、東の佐倉”という標語を聞かされて育った。今でも佐倉の人達は、「西の長崎」と聞かれれば、「東の佐倉」と必ず答える、と放映していました。
何をもって東の佐倉なのか?全く知りませんでしたが、佐倉には「蘭方医学塾」と言う誇るものがあったのです。江戸時代後期に西洋医学を学べる優秀な医学校があり、オランダ医学書を基礎としながら、当時としては最高水準の外科手術を中心とした実践的な医学教育と治療が行われた。その名声で全国の諸藩から西洋医学を学びに、数多くの優秀な若者が佐倉の医学校に来たのです。
日本の西洋医学発祥と言うと、シーボルトのいた長崎を思い付きますが、千葉の佐倉もそういう土地柄だったのでした。司馬遼太郎の「胡蝶の夢」には、“佐倉十一万石の領主堀田正睦は江戸城内では「西洋堀田」というあだ名をつけられたほどの開明家であり、堀田様の先進性と佐藤泰然氏の熱意とが佐倉の医学校を作り上げた。”と書かれているそうです。この医学塾が、その後順天堂大学医学部になって行きます。
そうか、順天堂大学医学部のルーツは佐倉にあったのか!この歴史があるので、順天堂大学医学部生は最初の一年間は、発祥の地、佐倉で学んでいるのか。
大学のHPでは、“順天堂の「順天」は、中国の古典「易経」にある「順天応人」(天の意志に順い、人々の期待に応える)と、孟子の言葉の「順天者存。逆天者亡」(自然の摂理に順うものは存続して栄え、天の理法に逆らうものは亡びる)に由来します。 学是は「仁」、理念は「不断前進」であり、校章は「仁」を意匠化したものです。”と説明されています。
順天堂大学の学是(がくぜ)は「仁」か。正にドラマのタイトルと一緒です。待てよ?仁?そう言えば仁のドラマロケも湯島(JR御茶ノ水駅北側)の順天堂大学病院で行われている。そう思ってネットで検索してみると、ドラマの中で主役の南方仁が作った医院「仁友堂」は、順天堂をもじっているといくつかヒットしました。
佐倉に、順天堂大学に、仁のドラマか。なんか、嬉しい知識の関連性を知ることができました。
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