2013年4月5日(金)
19歳はスキー場リフト代が無料
東洋経済のオンライン記事で、リクルート社のじゃらんチームが仕掛けた戦略が紹介されていました。
”雪マジ19!(19歳はスキー場リフト代がタダ)”
この大胆な戦略のおかげで、今まで閑古鳥が鳴いていたスキー場に若者が戻り、19歳の約1割がスキー場を訪れたそうです。
「タダのお客さんに来てもらっても損するばかりだ!」最初はどこのスキー場もそう思って相手にしなかったのが、リクルートのじゃらん担当者・加藤史子さんの熱意に負け導入すると、19歳を中心にした若者が一気に増えました。
リフト代はタダでも、スキー場に来ればレンタルでスキー板、靴、スキーウェアは有料で借りてくれますし、食事だってしてくれる。やれば楽しいスキーは、19歳を夢中にさせ宿泊者も増加させます。基本的なサービスを無料で提供し、追加機能や継続利用するという「フリーミアム」の見事な戦略です。
バブル崩壊後20数年もじっと我慢の時代に育った若者は、必要な消費以外しようとしません。その世代にまずスキーの楽しさを知ってもらい、将来の顧客へと育てていく。スキーの魅力を知った19歳は、次の年も、その次の年もスキー場に訪れる。ファンを毎年確実に増やしていくための「19歳のリフト代タダ」というのは素晴らしいアイディアです。SNSに長けている19歳は、あっという間に友達にこのアイディアを宣伝し広めてくれます。
19歳が大挙してスキー場に行くようになると、反対していたスキー場も次々とこれに賛同し、現時点では136カ所のスキー場で「19歳のリフト代タダ」を採用したそうです。お客さんが何もしないでスキー場に来てくれる状況ではなくなった今、「損して得取れ!」のフリーミアムは、色々なところに応用できそうです。
4月26日の新聞に、「映画館、高校生は1000円」という記事も出ていました。従来は高校生も大人料金で一律1500円だったのを、高校生だけ1000円に下げる。これも非常に良い戦略だと思います。ネットで簡単に安く映画を見られる、下手すればタダで見られるこの時代、映画館に行く機会は減る一方です。
しかし、大きいスクリーンで見る映画館は、行けばやはり来てよかったと感じさせてくれます。そのためにも若い内から映画館で見てもらう、そのためにも安い料金で楽しんでもらう。これは当然ありの発想です。惜しむらくは、「高校生・大学生は半額」だったら、よりインパクトがあって良かったのに。
このフリーミアム、特定の人だけ大幅料金値引きの戦略が使えるのは、他にどのような業界が考えられるか。やってみれば楽しいのに、なかなかやるキッカケがない。ファンが年々高齢化し、若いファンが獲得できていない、このような業界に向きそうです。例えば
・ゴルフ場 → 25歳までは平日のグリーンフィー半額
・ボーリング場 → 高校生、大学生は平日の料金半額
・ビリヤード → 高校生、大学生は平日の料金半額
・社交ダンス → 50歳以下はレッスン料1年間半額
・スポーツ吹き矢 → 初心者はレッスン料1年間半額
・渓流下りのラフティング → 20歳は利用料半額
考えてみれば、デパート、スーパーでどんどん食べさせる試食もフリーミアムそのもの。まずは経験させて、ファンを獲得する。愛好者が減るばかりと嘆いていても、ファンは増えません。
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