2014年8月2日(土)

外国人が喜ぶ日本人の知らない観光資源

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 マツコデラックスと関ジャニ∞村上君の2014年5月の番組「月曜から夜ふかし」で、“外国人が喜ぶ日本人の知らない観光” をテーマに取り上げていました。「へー、そういうことに喜ぶのか」と大変参考になりました。

①台湾人がサイクリングのために広島県尾道に集まる

 台湾ではスポーツサイクリングが人気で、世界に誇る自転車メーカーが2社あるそうです。その内の1社「ジャイアント」の劉金標会長が来日し、しまなみ海道をサイクリングしブログに「景色が素晴らしく、とても走りやすい」と書いた。これが台湾で話題になり、サイクリング好きの台湾人が続々と尾道を訪れるようになったそうです。

 本州の尾道から四国の今治まで約70km。四国3本の橋の内、しまなみ海道にだけ自転車専用道路があり、美しい海、瀬戸内海の島々を楽しむことができます。今まで自転車道も有料だったのが、2014年7月から無料にすると最近の新聞記事に出ていました。尾道市観光課によると、沿線のレンタサイクルの利用は2008年度4万1900台、これが2013年度は8万1800台に。サイクリング利用客数は、2013年度は推計18万6000人と過去最高になったということです。

 現在、台北と広島間をLCCニーハオ・エコノミーの定期便が飛んでおり、これも台湾人が広島に来やすくなった要因の一つです。ガルーダ・インドネシア空港も、日本各地をサイクリングで回るツアーを企画開催しているそうです。LCCの就航に合わせて、自転車道を整備し、大勢の外国人宿泊者を呼び込む。地域おこしのためのマラソンイベントが各地で行われていますが、そんな年に1回のイベントに頼るよりも、日本の美しい自然風景をサイクリングで回るツアーはかなり有望な観光資源と言えます。

 ②ヨーロッパの人が新潟に美しい魚を見るために集まる

 新潟がある趣味のヨーロッパ人に人気なのだそうです。「美味い米」が目的と言うわけではなくヨーロッパにはいない「美しい魚」。そう、錦鯉が人気で、その買い付けのためにわざわざ新潟まで訪れています。2004年の地震で壊滅的被害が出た山古志村も、錦鯉の生産で有名でした。番組では「こんな美しい魚は見たことが無い」とドイツから来た人がインタビューに答えていました。

 17世紀に日本の白磁器有田焼(伊万里)を高価な金額で沢山買い取ってくれたのもドイツの貴族たち。錦鯉の日本の美意識が、ドイツ人の琴線にも響くのでしょうか。

 ③オーストラリア人がわざわざ宇都宮の居酒屋に赴く

 宇都宮のどこにでもありそうな居酒屋に、オーストラリア人観光客がわざわざ新幹線に乗って食事に行く。その理由というのが、“ニホンザルが給仕をしてくれる” からなのです。本物の猿が、おしぼりやビール瓶をお客さんのところまで運んでくれる。これがオーストラリア人に大うけなのです。

 オーストラリアには、カンガルーやコアラは沢山いるけど、日本猿はいません。普段見ることのない猿が飲食店にいて、まして給仕までしてくれる。このアメイジングがオーストラリア人の心を捉えたのでしょう。もしかしたら日光猿軍団から失業後の再就職猿なのでしょうか。

 猿が観光資源と言えば、長野県の地獄谷温泉が有名です(正式には、地獄谷野猿公苑。長野県の北部、上信越高原国立公園の横湯川の渓谷にある)。野生の猿が自然にわき出た温泉に浸かる姿は、日本人よりも外国人観光客に有名になり、猿を見るために大勢の外国人ツアー客が訪れています。

 野生の猿が温泉に入る姿は日本人でもワクワクしますが、普段日本猿を見たことが無い国の人には何倍もアメイジングなのかも知れません。上手くすれば秋田犬、三毛猫、イノシシ、西寒立馬、トンビ等も外国人に受けるかも知れません。

 ④タイ人が北海道の外れの歌登のホテルに泊まりに行く

 札幌から200km以上も離れた特段の観光資源があるわけでもない場所にある潰れそうな三セクの観光ホテル「歌登グリーンホテル」。タイ人の旅行エージェントに、何とか歌登までタイ人観光客を連れてきてほしいと頼んだところ、「こちらの希望を何でも聞いてくれるなら」ということで始まったのが、タイ人のための歌登ツアーです。

 四季に関係なく、日本の風習、文化を思う存分楽しむ今のスタイルが出来上がりました。ホテル到着と同時に浴衣に着替える。餅つき、自分で寿司を握る。日本の色々なものが食べられるブッフェ。食事の後は盆踊りをして、羽根つき、コマ回しを楽しむ。一番のエンターテイメントは、外に出て雪だるまを作り、カマクラの中に入って寒さを体験すること。寒さで凍える雪の中を訳もなく走り回って楽しみます。

  この番組以外でも、外国人の日本を楽しむ意外な場面をいくつか見ました。

⑤北海道でレンタカーのドライブを楽しむシンガポール人

 2014年7月の未来世紀ジャパンで放送されました。シンガポール人が北海道でレンタカードライブを楽しむように仕掛けたのが、シンガポールの旅行会社「フォローミージャパン」西村紘一会長。土地の狭いシンガポール人は、広大なオーストラリアなどに行って、ドライブを楽しむのだそうです。これを北海道でツアーでできるようにしたのが西村さんです。

 レンタカーで走る途中に寄ったのが小麦畑。広大な小麦畑の中を、収穫用のトラクターに親子連れで載せてもらい、小麦の収穫を体験します。どのように小麦が作られているか子供に見せられて本当に勉強になった。良いツアーだったと語っていました。

 北海道の大自然は日本人にだけでなく、シンガポール、香港などの狭い所の国の人達にも魅力的な場所だったのですね。その中では、農業の収穫まで体験ツアーになってしまいます。

 ⑥下町の猫の姿を追う英国人

 低価格で宿泊できるホテルを浅草などで展開しているカオサンホテル。ここが企画した外国人宿泊客に無料で自転車を貸出し、下町自転車ツアーをしてもらおうと企画しました。下町の住宅街を抜けていく途中、英国人が自転車を降りて、しきりに家と家の隙間を写真に撮っています。彼が気になったのは、塀の上にいるごく普通の猫でした。我々にとっては気にも留めない猫が英国人には非常に興味の対象になったようです。塀の上で寛ぐ猫が、彼にとっては野生の山猫ほどの価値があったのかも知れません。

 以前、カンブリア宮殿でLCCピーチエアーを特集した時に、LCCで関西新国際空港に来たアジア人観光客が和歌山の温泉地に行く。その折、和歌山電鐵貴志川線貴志駅のたま駅長を見に行くと放映していました。三毛猫1匹が大勢の観光客を呼び寄せるというのも凄い話です。

⑦お寺などの屋根瓦

 外国人観光客が大勢来る根津の「澤の屋旅館」。何度もここに来る外国人リピーターが、この辺りの日本らしい風景が大好きだと言っていました。日本らしい風景とは、お寺などの瓦の屋根です。東京ではすっかり少なくなってしまいましたが、黒い屋根瓦も立派な観光資源になっています。

まだまだ沢山あるのでしょうね。外国人が喜ぶ日本の何気ない風景、文化が。

 

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