2015年5月18日(月)
儲かる島 久米島、奥尻島、八丈島
TBS日曜午前放送の平成27年5月17日「がっちりマンデー」で、“儲かる島”というテーマで、3カ所の島を取り上げていました。沖縄の久米島、北海道の奥尻島、伊豆七島の八丈島です。それぞれが地域資源を使って、がっちり儲けていると言う話です。
1.沖縄県久米島の海洋深層水
・久米島はリーフの外は急激に深くなる地形で、海洋深層水を取るのに適している。この海洋深層水を使って育てているのが車エビの養殖。元々車エビの養殖は行っていたが、育てることはできたも卵を産ませることができなかった。そのため車エビの赤ちゃんを他から仕入れなければならなかった。卵を産まない原因は温かい海水にある。試しに冷たい温度の海洋深層水を使って育てると、車エビが卵を産むようになった。車エビの卵から稚魚を育て出荷し、また卵を産ませると言う完全養殖ができるようになる。これで車エビの年間売り上げが9億円になっている。
・海藻の一種である海ぶどうの養殖も海洋深層水を使って盛んに行われるようになった。海ぶどうの売上も年間3億6000万円ある。その他、天然塩や海洋深層水の豆腐を作って売っている。久米島海洋深層水㈱という会社を平成12年1月に設立し、この会社がミネラルウォーター・自然塩の製造・販売、海葡萄の養殖を行っている。
・ホテルの冷房用に海洋深層水を使って冷やし、電気代を節約している。他にも熱い沖縄では作れないホウレンソウなどの葉物も、海洋深層水を使ってビニールハウスを冷やし作り始めている。
海洋深層水は浅瀬の海水と比べると1)太陽光が届かないため年間を通して9度前後の低水温 2)太陽光が当たらないため、植物プランクトン等による光合成が行なわれない。結果、栄養塩が消費されず、ケイ酸態ケイ素、リン酸態リン、硝酸態窒素など栄養が豊富 3)有機物が少ないので細菌が少ない という特徴があります。車エビの養殖や、海ぶどうの養殖に海洋深層水を使うことは理にかなっています。
また、海上表面上の高い温度と、海洋深層水の低い温度を利用した「海洋温度差発電試験」も行われています。深層水研究所が約2kmを超える取水パイプで600m強の深さの海底から約8.5度の深層水を取水。一方表層水は夏で29度、冬で22度程度、平均26.5度。この18度の温度差を使って発電を行う仕組みです。原理的には地熱を使ったバイナリ―発電と一緒です。現在は50kwhの規模で実験中で、上手く行くようであれば将来1000kwhくらいの規模を目指すようです。
2.奥尻島のワイン造り
・㈱海老原建設という地元ゼネコンが奥尻ワインを作って儲けている。1993年の大地震による奥尻島の津波被害で壊滅的被害を受けた。この時の復興策で一番人手が掛かる(多くの労働者を雇用できる)仕事は何かということで、葡萄作りを始めた。葡萄は枝の剪定や施肥、収穫など多くの人手を要求する。
・しかし作り始めて失敗だったのが、奥尻島の土壌は粘土質で水はけが悪く、乾燥した土壌を好む葡萄作りには向いていないことが分かった。そこで海老原建設が取った策は、畑の地中に水抜き用のパイプを通し土を水はけのよい土地に変えたこと。土を掘ってパイプを敷き詰めるのは建設業なので得意中の得意。これにより土壌改良され、奥尻島で上手く葡萄が育つようになった。
・葡萄作りが成功したので、今度はワイン造りにチャレンジした。奥尻島は北過ぎてワイン造りに向かないと思われるかも知れないが、フランスボルドーとほぼ同じ緯度であり充分ワインが作れる環境にある。出来たワインは思った以上に好評価を得る。その理由は、海沿いの葡萄畑なので海風が当たり、葡萄の表面に海のミネラルが付着したこと。この海のミネラルがワイン造りで微妙な塩味を加味し、ここでしか出せないワインの味を造り上げた。現在は1億円くらいの売上だが、近い将来は3億円の売上を目指す。
葡萄の栽培が始まったのは1999年。ワイナリー設立が2008年で、2009年に念願の初出荷という歴史です。一番最初は、島に自生する山葡萄(やまぶどう)を植えることから始め、その後ワイン用品種の栽培を始め、現在は11種類・6万本以上の葡萄の木が育てられています。
奥尻島に行ってウニや地魚を満喫しながら、ワイナリーで数日を過ごす。奥島ワイナリーはワインの売上以上の観光資源を作ったと言えます。
3.八丈島のロベ
現在の八丈島の人口は8000人。この八丈島で一大産業になっているのが「ロベ」だそうです。何だ、ロベって?と思って見ていると、フェニックス・ロベレニーが正式名称で、八丈島の人達はこれを省略して「ロベ」と呼んでいるそうです。
・ロベはヤシ系の南洋植物で、生花店で生花と一緒に花束にする葉物(グリーン)として使われる。非常にポピュラーでほとんどの生花店で扱う人気の商品。八丈島でロベの出荷額は8億円ちょっとある。
・島での生産の歴史は古く大正8年から作られるようになった。何故八丈島で生産が盛んになったかというと、八丈島の自然環境がロベを作るのに非常に適していたから。夏場でも30度を超すことはなく、冬場の平均気温も10度。この安定した気温がロベ作りに最適。また降雨量が多い地域でないと育たないが、八丈島は年間降水量3200mmという日本でも三番目に雨が降る場所。雨さえ降れば後は手間要らずなので、ロベ作りは木を植えて後は葉を取るだけと言う非常に楽で美味しい商売。
・一本の木から年に30枚の葉を出荷できる。1枚の葉は20円で売れる。収入が多い年は、稼ぐ人で1000万円以上の売上になる時もある。この農家さんには最近東京の飲食店で働いていた息子が島に帰ってきた。理由は親父がロベで儲けているから。東京の飲食店で安い給料で働いているよりも、収入も高いロベ作りをした方が良い。
いまや東京大田区の花卉(かき)市場では「“ロベの島”八丈」と言われるほどだそうです。他にも生花店でお馴染みのシダ類の「レザーファン」、これも八丈島が一大生産地。レザーファンはハウスで栽培されています。
ロベ作りも楽だと書きましたが、種を植えて苗にするまでに4、5年かかり、苗になったら定植して、この高さになるまで更に5、7年。どんなに早くても定植から5年目でやっと製品を採れるようになる。そんなに簡単ではないのかも知れません。
自然が味方をしてくれる植物を生産できる八丈島には、圧倒的競争力があります。離島の人達イコール所得が少ない人、という一元的見方は改めた方が良さそうです。
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