タイ人訪日観光客とＢＡＯＢＡＯのバッグ

都市鑑定アドバイザリー（株） 不動産鑑定士　田中祥司

　日本政府観光局（ＪＮＴＯ）によると、２０１４年に訪日したタイ人は約６６万人で、３年前の４．５倍になったと言う記事が出ていました。外国からの訪日では、国別で最も高い伸び率だそうです。日本自動車メーカーのアセアン一大拠点のタイ。年々所得は上がっており、２、３年後には１００万人くらいまで伸びるかも知れません。そんなタイ人観光客の情報をまとめてみました。

①富士山が大好き

富士吉田町の新倉山公園にある五重塔から見える富士山の景色がタイ人に人気がある。赤い五重塔と雄大な雪を被った白い富士山。このコントラストが、京都と富士山両方を堪能できるとタイ人の女性がＳＮＳで発信したところ、これが瞬く間に情報が広がりタイ人の定番スポットになる。富士河口湖町では外国人宿泊者数で、２０１３年が１位、２０１４年が中国人に次いで２位。タイ人の山梨県での宿泊は、東京、大阪、京都に次いで第４位。

②北海道が大好き

北海道への観光客数も年々凄い伸び率を示している。２０１１年は９,７００人だったのが、２０１２年は３７,０００人、２０１３年は９８,８００人。いち早くタイ人観光客に目を付けた歌登町（現・枝幸町　えさしちょう）の三セクの観光ホテル「歌登グリーンホテル」。札幌から２００ｋｍも離れた不利な立地にもかかわらず、タイ人団体客の誘致に成功。新千歳空港にはタイ国際航空の他に、ＬＣＣのエアアジアＸが現在就航している。

③新宿の焼肉屋「六歌仙（ろっかせん）」が大人気

新宿青梅街道の大ガード近くにある焼肉店・六歌仙。ビルの上にある店舗でそれほど目立つ場所ではないのに、タイ人観光客が連日押し寄せている。「日本で一番美味しい焼肉屋は六歌仙だ」と口コミで広がり、お客の大半がタイ人になってしまった。

④イッセイミヤケのＢＡＯＢＡＯのバッグ

２０００年にタイの王女が公式行事で持っていたのがＢＡＯＢＡＯのバッグ。これが話題になり、タイ航空のＣＡがこぞって買うようになる。これが、中国、韓国等の女性に飛び火し大ブレイク。人気の理由は、三角ピースのでこぼこした立体的デザインが、近代的なＴＯＫＹＯを感じさせる。価格は２万円～３万円と高価ではない。日本で買った方が本国より３割～４割安く買える。

⑤ビザの緩和

日本では２０１３年７月よりタイ、マレーシア等東南アジア５か国の短期滞在を目的とした訪日客に対し、ビザを免除するようになった。 

　銀座界隈では圧倒的に中国人観光客が目立っていますが、昨年くらいから他のアジア人もかなり見かけるようになりました。先日バスから降りてきた女性たちが、頭にショール（正式にはヒジャブ）を被っていたのでどこの国かと思ったら、ガイドさんがIndonesiaの旗を持っていました。中国人ほど騒々しくはなく、総じて大人しい団体です。

　銀座松屋デパートの銀座通りを曲がった松屋通り沿いに、三菱東京ＵＦＪのＡＴＭがありました。これが２か月前に閉鎖になり、その後何になるんだろうと思っていたらイッセイミヤケのＢＡＯＢＡＯのバッグ屋になりました。こんな小さい店（約３坪）で大丈夫かと思ったら、これが連日長蛇の列なのです。

　最初は何の行列か分からず、デパート開店１０時前に行列を整備している店員さんに「この行列は何なのですか？」と聞くと、「イッセイミヤケのバッグのお客様です」との答え。ＢＡＯＢＡＯのバッグに行列が起きる現象は、松屋デパート以外でも渋谷ヒカリエでも起きているようです。

銀座松屋のＢＡＯＢＡＯに並ぶ訪日観光客

 　いずれタイと同様に、マレーシア、インドネシア、フィリピンあたりの訪日客も増えてくるでしょう。彼らをターゲットにした観光業は相当の伸びしろが見込めます。

追記１　日本政府観光局（ＪＮＴＯ）発表の２０１４年度の外国人訪日客数は、１位：台湾２８３万人、２位：韓国２７６万人、３位：中国２４１万人、４位：香港９３万人、５位：米国８９万人、６位：タイ６６万人、７位：オーストラリア３０万人。

追記２　先日放送されていたテレビニュースで、北海道のブリザードツアーをやっていました。猛烈な吹雪の中をタイ人旅行者がニコニコしながら嬉しそうに歩いていく。日本人では絶対参加しないようなツアーですが、雪を見たことが無い人たちにとってはこの上ない楽しい経験なのでしょう。