2016年3月10日(木)
福島県矢祭町の手作り図書館
地方の再開発ビルの手法として、集客の目玉に図書館を建物に入れるのが流行っています。2001年竣工の青森駅前再開発ビル「アウガ」、2007年竣工の福井駅前再開発ビル「AOSSA(アオッサ)」、2012年竣工の岩手県紫波中央駅の「オガールプロジェクト」等です。他にも図書館併設の再開発プロジェクトは続々と計画されブームのようです。
特に「オガールプロジェクト」は地方再生の優良モデルケースと呼ばれています。駅前の町有地10.7ヘクタールを中心に、図書館、体育館(バレーボール専用)、産直マルシェ、ホテル、カフェなど人が集まる施設を集め、誰もいなかった紫波中央駅に年間80万人が訪れるようになりました。
3月8日NHKで放送された陸前高田の「ゼロから町をつくる」でも、オガールプロジェクトの手法を踏襲し、嵩上げ台地に大規模小売店と図書館を併設する計画と伝えていました。
しかし、本当に凄いなと思った図書館は、福島県南部の矢祭町の図書館です。相川俊英氏著書の「反骨の市町村、国に頼るからバカを見る」(講談社)に紹介されていました。2007年1月にオープンしていますが、名前が「矢祭もったいない図書館」と名付けられています。税金に頼らず、町民の努力で寄贈本(全国から無償で集めた)だけで作ってしまった凄い図書館です。以下、「反骨の市町村」から内容をまとめてみます。
・矢祭町は平成の大合併に反旗を翻し、2001年10月に合併しない宣言を根本町長が全国でいち早く行った。総務省がそんなこと言わないで合併しなさいよと説得に当たるも矢祭町(人口約6200人)はそれを拒否。
・独立独歩を選んだ町は、行政改革を断行。議員定数削減(18人→10人)、議員報酬を日当制に(3万円/日)、町長など3役の報酬を総務課長と同額(月額52.3万円)にするなど緊縮財政を実行。
・町には本屋が一件も無く、町民の悲願は図書館を作ることだったが、上記の通り金が無い貧乏自治体。老朽化した町所有の柔道場を1億2000万円で改修し図書館を作ることまで決まったが、それ以上の財源は無い状態。町がやりくりして捻出できた図書購入費はたったの300万円。普通のやり方ではどう考えても図書館はできなかった。
・ある会合に根本町長代理で出席した図書館建設担当の町役場職員の高信さんが、「お金が無いので、寄贈本によって図書館を作る」と言う夢を講演で語ったところ、毎日新聞が直ぐに取り上げてくれて全国に発信される。
・2006年7月から3万冊集めることを目標に寄贈本募集を正式に開始。本当に本は送られてくるのかと心配しながら進めたが、驚きの結果が!全国から続々と段ボールが届けられ、町中、本で溢れかえってしまった。
・町職員だけでは人手が全く足りず、住民ボランティア多数が本の整理に当たった。町議や助役、消防団、PTAなど連日大勢の人たちの奮闘で全国から集まった約29万冊(目標の10倍)を整理し終わった。この中から3万6000冊を図書館の貸し出し用として揃えた。2007年1月に晴れて「矢祭もったいない図書館」として開館された。
・運営面でも有償ボランティア(時給500円)が1日4人体制で運営。図書館司書の資格を持つ人は当初1人だったが現在では4人体制になっている。税金や民間事業者に頼ることをせず、ほとんど低予算で図書館を開館、運営することに成功した。
・町職員、住民が奮闘している間も図書館専門家は冷たい言葉を浴びせていた。図書費を掛けないことや専門職の司書を置かないことで、「こんなでたらめな図書館は図書館として認められない」と言った図書館専門家までいた。
広島県福山市や愛媛県西条市の図書館を訪れた際、どんだけ税金で巨大図書館を作ってしまったんだろうと驚いたことがあります。それに比べて、矢祭町のような賢いやり方もあるのだと爽やかに驚くことができました。財源が無いけど図書館が欲しい町村には非常に良いお手本だと思います。
追記 CCC運営の図書館が結構叩かれています。民間委託を嫌う○○労的団体が情報操作していることも考えられるので、情報の出元には要注意です。
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