2018年5月8日(火)
地方都市の中古戸建てをリノベして販売するカチタス
テレビ東京「ガイアの夜明け」の平成30年3月6日放送で株式会社カチタス(本社:群馬県桐生市)が紹介されていました。
TX守谷駅から10km以上離れた築40年以上の戸建住宅。ご両親が亡くなりこの実家を相続した方が処分に困っているところで、カチタスに買取の打診をします。この老朽化した戸建をカチタスが買取り(買取価格は不明ですが、想像では200万円、300万円くらい)、概算300万円の大規模改修工事を行って建物を甦らせ、エンドユーザーに1200万円で販売に成功するという内容です。
都内や東京近郊であれば中古戸建も需要がありますが、都心から40km圏を超えたエリアで、かつ駅から距離があるような中古戸建は絶望的に買い手がいません。これをカチタスは上手に安く拾い(仕入れ)、大規模に手を入れることで売れる商品に仕上げています。テレビでは外壁材に金属製カーテンウォールで仕上げたかったのを、販売価格重視でペンキ塗装での仕上げにしたと言っていました。
地方都市でも新しく住宅を購入するエンドユーザーは必ずいますし、今までは地元不動産業者が新築戸建てを供給していました。この新築戸建てを購入していた人たちに、新築同等にリノベーションした中古住宅を買ってもらうというのがカチタスの戦略です。新築に比べれば価格は6割から7割と低額で、若い購入者には魅力となります。駅から遠くても近隣にショッピングセンターや公立小中学校などがあれば、車で移動する人たちにはさほどの不便にはなりません。
実家から遠く離れて暮らす相続人にとっても、空家を維持管理することは難しく、実家がこのまま朽ちていってしまうのも忍びありません。解体するだけでも普通は150万円から200万円くらい掛かってしまいます。そうであれば、現状のままで200万円、300万円で手放しても惜しくはありません。
競争相手のいない地方都市で、かつ中古戸建に絞って仕入れるとは優れた戦略だ。そう思ってカチタスを調べてみると、時価総額1400億円を超える東証一部上場企業であることを知りました。カチタスのHPを見ると下記内容が出ていました。
・元々は「やすらぎ」という会社が前身で、群馬県桐生市で1978年に石材業として創業し、1998年から現在の中古住宅再生事業を主体に事業運営を行ってきた。2004年に名古屋セントレックス上場。
・2012年に投資ファンドのアドバンテッジパートナーズが全株式を買い取り上場を廃止。この時に社長として送り込まれたのが、現社長の新井健資氏。新井社長はコンサルティング会社を経てリクルート社という経歴。2013年に社名をカチタスに変更する。
・2016年3月に同業の株式会社リプライスをM&A。人口30万人以下の地方都市を中心に、年間3000棟以上を売っている中古住宅買取り再販の大手となる。年間売上は2016年時点で500億円以上となる。
・2017年に家具のニトリと資本・業務提携。ニトリは233億円でアドバンテッジパートナーズの株式を買い取った。ニトリの保有株数比率は34%となり、カチタスはニトリの持分法適用会社となった。
・2017年12月に東証一部に上場を果たす。初値は1665円で、平成30年5月7日時点では株価3650円、時価総額1435億円。平成30年3月期通期予想は、売上高約680億円、営業利益約70億円、経常利益約64億円。
新興系上場不動産会社の同日時点の時価総額は、オープンハウスデベロップメントの約3536億円には負けますが、サンフロンティア不動産の約651億円、トーセイの約653億円に比べて2倍以上の評価になっています。
カチタスの一番の強みは、「人口30万人以下の都市に集中出店」という戦略だと思います。どの会社も人口の多い大都市に力を入れますが、これとは逆張りで地方のマイナー都市に集中出店。当然その地域ではライバルはおらず、自分たちの言い値で物件を仕込め、販売を行うことができます。仕入れ価格も都心と違って1件300万円前後でしょうから、1万棟在庫があっても300億円に過ぎません。
このビジネスモデルの強みをいち早く見抜き、PE(プライベート・エクイティ)投資したアドバンテッジパートナーズは大したものです。結果は上場前提でエクイティ(出資分)をニトリに売却して大儲けです。
決算短信で見る流動資産(既に購入済の中古戸建て住宅)も約350億円あり仕込みも充分そう、まだまだ売り上げは伸ばせそうです。株式大量保有者には、投資信託を運用するレオスキャピタルも名を連ねていました。今のうちに少し株を買っておこうかと思っています。
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