2010年7月13日(火)
9-1 共同債権買取機構(CCPC)から始まった不良債権処理
1990年秋口に平成バブルが崩壊し、その後10数年に渡り、日本の地価は下落の一途を辿りました。バブルがはじけた最初の頃は、土地への融資規制をおこなった三重野(当時の日銀総裁)が悪い、サダム・フセインのせいだ(イラクが隣国クウェートに突如侵略し、世界がパニックになった)等と、こんな地価下落なんて何時までも続かない。その内どこかで状況が変われば地価は反転するさ、という淡い期待もありました。しかし、その後何年経っても地価は反転するどころか、毎年大きく価格を下げ続けました。
大まかに言ってバブル終わりの頃の銀行の不動産融資残高は、約300兆円あり、この内最終的には約100兆円が不良債権処理されました。最初は、多額の不良債権を処理する手法が日本には無く、新しい仕組み(スキーム)が必要でした。不良債権処理のために最初にできたスキームが、共同債権買取機構(CCPC:Cooperative Credit Purchasing Company.)でした。共同債権買取機構は、民間金融機関の不良債権処理を促すために、都市銀行、地方銀行などの金融機関による出資により、平成5年に設立されました(本社、東京都千代田区神保町)。
銀行が自分の融資(貸付債権)として抱えたまま、いくら貸倒れ損(貸し倒れ引当金)を立てたとしても、自分の貸借対照表(バランス・シート)から、不良債権残高が除外(オフ・バランス)されることはありません。不良債権残高を減らすにはどうしたら良いか?それには、外部の第三者に貸付債権を売却することで、ようやく不良債権を自分のバランスシートからオフバラすることができるのです。
銀行団が作ったとは言え、一応外部の共同債権買取機構に売却することにより、不良債権を処理することができました。売却するのは、不動産を担保に貸し出していた債権で、貸している相手方が延滞状態に陥っているものです。
しかし、ここで話は終わりません。何故なら、CCPCは適正に値付けして債権を買ったものもありますが、銀行の体力と相談して値決めされたケースもあったからです。例えば、A会社の50億円の貸付金だけど、今、担保不動産を叩き売ったら20億円しかならない。でもそうすると、30億円も貸倒れ損を立てなければならなくなってしまう。取り合えず、今期はCCPCに30億円で譲渡して、20億円の債権譲渡損を出しておこうと、そういう生ぬるい処理も行われたようです。
土地はその後も下がり続けましたので、1年経ち、2年経てば当然担保価値が下落し、結局10億円くらいでしか売れなくなってしまいました。CCPCに債権を譲渡して終わったはずが、その後も土地が下落したために第2次損失(2次ロス)が発生してしまったのです。CCPCの仕組みとして、最終的に不動産が第三者に売却されるまで、債権を譲渡した銀行が最後まで責任を持つと言う仕組みになっていました。
本格的に、不良債権を処理し始めるのは平成10年からですが、それ以降は外部の投資家、ほとんどは外資系証券会社、ファンドでしたが、そこに売却されることで真のオフバランスが可能になったのです。
しかし、積極的にCCPCに債権譲渡して処理していたのは、まだ健全な金融機関でした。CCPCに債権を譲渡して、損を出す体力さえもない。こういう銀行が考えた手段が、系列会社やダミー会社への「飛ばし」でした。日本を代表する銀行だった日本長期信用銀行(長銀)は、2000年に破綻しますが、長銀は大半の不良債権を飛ばしで別会社に移し、損金処理を免れていたのです。
飛ばしとは、不良債権を正常債権に見せかけるテクニックですが、具体的には以下のように処理します。
・不良債権扱いされた会社が持つ不動産を、銀行主導で作った新設の会社に売買で所有権移転をする。
・新設の会社には、飛ばしを行う銀行や系列ファイナンス会社が融資を行う(融資の付替え)。
・新設会社は、できたばかりで返済は滞っていないので、この会社に対する債権は正常債権となり、貸倒れ損 も計上する必要はなくなる。
融資している銀行からすると何の問題解決にもなっていませんが、取り合えず貸倒れ損失計上は免れることができます。このような飛ばし行為は、長銀でも、日本債権信用銀行(日債銀)でも、北海道拓殖銀行(拓銀)でも行われていたのです。大蔵省銀行局から金融庁(当時は金融監督庁)に銀行検査が移行して、ようやくこのような処理ができないようになったのです。
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