2010年7月17日(土)

6-6 ホテルのコストダウン

都市鑑定アドバイザリー(株) 不動産鑑定士 田中祥司

 普段東京にいると分かりませんが、東京のホテル需要は相当高いものがあります。先日も大阪の知人に頼まれ、ホテルを探したのですが、満室、満室でなかなか手頃なホテルの予約を取ることができませんでした。東京以外の都市なら、よほどのイベントでも重ならない限り大概その日の予約で泊まれるのですが、東京は断トツ宿泊客が多いのでしょう。国土交通省総合政策局観光経済課の「宿泊旅行統計調査報告」によると、東京都の宿泊者数は平成19年7月~9月855万人(1日当たり約9,300人)、第2位は北海道で799万人(1日当たり約8,700人)となっています。

 ホテル賃料も高いし、宿泊稼働率もそうそう上がらないとすれば、オペレーターも利益を出すためには、必然的にコストダウンに目が行きます。それではコストダウンを図るにはどうしたら良いでしょう? ホテル計画に詳しい設計士さんからコストダウンの方法をいくつか教えてもらいました。

①自動チェックイン・チェックアウトシステム

 新しいビジネスホテルでは相当導入が進んでいます。現金管理を機械に任せられるため、フロントの人件費を大幅に削減できます。

②飲食部分の外部委託

 ビジネスホテルではほとんどの飲食部門が赤字になっていると思われます。飲食部門を外部のテナントに任せてしまい、宿泊に特化しているホテルが増えています。

③給湯器の個別化

 これもマンションと一緒ですが、電気式ヒートパネルを使った瞬間湯沸し器を使うと、温水を引っ張ってくる給湯管も不用となります。ガス湯沸し器ではないので、特に窓側に設置することも必要ありません。

④大浴場、温泉

 300室以上の規模が理想ですが、共用の大浴場を設けて、逆に客室はシャワールームにする。これにより、1人辺り水道料、温水(エネルギー消費)量削減を図ります。宿泊者にとっても狭いバスタブを利用するよりは、大浴場を使えた方が開放感もあり、利用満足度の向上に繋がるでしょう。ホテル側にとっても、バスタブに1人1人がお湯を入れて捨てる水光熱費の減少と、バスタブ掃除の手間の軽減を考えると、大いにプラスになるのです。

また温泉を掘って、大浴場を使用できたとするなら、より付加価値が高まります。温泉が出る場合は、水を温めるエネルギー代を激減できるので、温泉が出る可能性が高いなら温泉を掘った方が良いでしょう。札幌のように、新しいホテルが次々と温泉を掘ってしまったので、これ以上温泉を街中で掘らせないように条例で規制してしまった例もありますが。

⑤空調機器の個別化

 従来のホテル建築だと、セントラルの冷暖房設備があり、そこから各居室に空調ダクトを通じて冷暖房を供給していました。しかし、ホテルの設備で最初に問題が起こってくるのが冷暖房設備であり、セントラル方式がベストとも言い切れません。逆に最近の流れは、1ルームマンションと同様に、1客室に1空調機、1室外機を設置するホテルが増えています。1ルームマンションに置くようなエアコンなら、廉価版で工事費込み7万円から8万円くらいでしょうか。これなら200室交換しても、1500万円くらいで済みます。ホテルには、客室以外のエントランス、共用廊下、飲食店もあるので、この分の空調機交換代も掛かりますが、それでも1億円までは掛からないでしょう。セントラル方式での本体取替え、空調ダクト交換等のことを考えると、大幅にコストダウンを図れます。

⑥床材質

 従来は、カーペットが主流でしたが、今後はフローリングが主流になっていくと思われます。カーペットですと、掃除機での清掃作業となりますが、フローリングならモップなどでもきれいになります。清掃時間も短縮でき、人件費の削減にも繋がります。もちろん傷は付くのですが、今は傷を目立たなくする塗料、目地材も良くなっているので、今後のリネン人件費の高騰も考えれば、フローリングにしておいた方が良いでしょう。

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