2010年7月17日(土)
5-コラム 江戸の郵便制度を支えたものは
江戸時代徳川幕府が諸国大名を支配するためには、幕府の命令が短期間で全国に行渡るようにする必要がありました。電話もファックスも無い時代これを支えたのが、文を届ける飛脚(今の郵便制度)です。飛脚は幕府の公文書だけでなく、一般庶民も出すことができ、大量の文が全国を行き来しました。
短期間で遠くにも文が届くようにするため、一定間隔ごとにある宿場町に中継点(厩、駅)を設け、人や馬が走って一定間隔の中継地毎に文を運びます。上方(京都)に向かった人・馬は、帰りには上方からの文を運んで帰ります。江戸を出た文が大阪まで着くのに、早い便は3日から4日で、通常の庶民が使うような便は大体20日から30日で届いたそうです。
駅の数が宿場町毎にあったとして5街道だけでも200駅以上あったので、これを維持するのには相当のコスト(文の仕分け係、馬の運転役、馬の世話役、馬の餌代など)が掛かります。コストは誰かが負担しなければなりません。飛脚の利用料金はもちろん取られたのですが、使用料だけでは足りず相当持ち出しだったようです。
この費用を捻出するために作られた仕組みが、助郷(近隣の村に人夫と馬を供出させる)であり、さらに宿場町の宿屋から売上の一部を飛脚制度維持のために供出させるという手法です。大勢の人が宿場町に訪れれば、それだけ宿屋の売上が増加し、しいては郵便費用がたくさん賄える。大勢の人が集まるように、宿場町には娯楽、すなわち“飲む、打つ、買う”が幕府・藩公認で作られたのです。飲むはお酒、打つは博打、買うは女性です。娯楽が少なかった時代に、宿場町に行けばたいそう楽しめると言うことで、大勢の人が集まるようになりました。
ただ誰にでも宿屋をやらせて好き勝手にさせてしまうと、無法地帯になってしまう恐れもあり、この宿場町は宿屋は何件までと規制が掛けられていました。そして、宿泊者を相手する女性の数も、宿屋ごとに細かく決められました。ちなみに公娼制度の女性は「遊女」、私娼制度(もぐり)の女性は「飯盛り女」となります。身売りされた娘さんを使った稼ぎで、江戸時代の郵便制度の一部が維持されていたと言うことです。
お伊勢さん参り(伊勢神宮への参詣旅行)が流行ったのも、伊勢神宮へのお参りしたいというよりも、行き帰りの道中に宿場町で遊ぶという方も大勢いたからでしょう。宿場町の実態は、ただ泊まるだけの場所ではなく、娯楽で人を集める繁華街そのものと考えられます。
5街道の宿場町の数は以下の通りです。
東海道:江戸・日本橋~京都三条間 126里半 53駅 大阪までは、京都三条から5駅あり江戸からだと58駅
中山道:江戸・板橋~滋賀県守山 120里 67駅 この後に大津を挟んで京都三条に着く。木曾山中を超えるので、東海道よりは険しい。
日光街道:千住~日光 21駅
奥州街道:千住~白川 31駅
甲州街道:内藤新宿~石和 28駅 諏訪を経て中山道に合流することができた。
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