2010年8月24日(火)
4-1 コンクリートの性能(強度)
最近のマンションは、建物構造の性能を謳うものが出てきて、100年住宅、200年住宅をアピールし始めました。床暖房、大理石キッチンも良いのですが、一番重要なのは安全を守るしっかりした構造体ですので、今後この傾向が強くなりユーザーも最重要視するようになるでしょう。
コンクリートは、セメント、砂利、砂、水を混ぜて練り、鉄筋を組み込んだ型枠の中に流し込んで固めたものです。でも知れば知るほど奥が深く、現場では適正に工事が行われて欲しいと願っています。コンクリートは打設後に化学変化を経て固まっていきます。その間に熱を放出するので過剰な熱はそれを冷ましたり(特に夏場のコンクリートは異常に高温になり設計値以上の乾燥収縮伴う危険性があります)、乾燥が激しい時には湿気を与えたりと(湿潤養生、保湿養生)、建築現場では手間を掛けて大事に見守られています。逆に寒冷地では、冬季のコンクリート打設後にボイラー養生して、適正な温度管理になるように施工する事もあります。
強度の強いコンクリートを作るのに最も重要なことは、“水とセメントを混ぜる比率“です。一般的には、セメント100に対して、水50から60くらいの間で配合設計がなされています。適正な配合設計以上の水を加えると、コンクリートが硬化した後に、当初に計画された設計強度に満たない事もあり、又ひび割れが生じる等の性能ダウンや耐久性能の低下が生じてしまいます。
しかし実際の建築現場では人為的ミスや気候等の影響で、この水セメント比が配合設計以上のゆるくなったコンクリートが打ち込まれている現場もあるのです。特に一昔前では現場でのコンクリートの打ち込み作業を容易にする為に、現場に到着したミキサー車に水を生コンに加える不適正行為が行われるケースもありました。これがいわゆる「シャブコン」と言われたものです。このように打設されたコンクリートが、数年後にコンクリート表面の剥離から生じるタイルの剥落や、ひび割れ発生による水漏れ等の被害を生じさせるのです。
コンクリート流し込み後の締め固めについても同様に、特に夏場などの外気温の高い季節に於いてはコンクリートの効果が早く、その結果流動性が悪くなり、ちゃんと締め固めが行われず、いわゆる「巣」と呼ばれるコンクリートの欠損部位が生じてしまいます。ポンプ車も早くコンクリートを上げてしまわないと、どんどん生コンが固まってしいます。 一般的には生コンに混入する空気の量や各種の添加剤を加える事でコンクリートの流動性を維持しますが、現場での気象状況の変化や予想外の交通渋滞により運搬時間が長くかかったりして、この流動性が悪くなる事もあり得ます。通常は搬入時に目視検査や現場でのサンプルテストにより状態の悪いものはその使用を取り止め送り返す事になっています。
そして現場に於いてはゼネコンの現場監督が、これらを監視し、品質の悪いコンクリートが打ち込まれないように注意しています。しかし全ての建設会社や現場監督がいつも適正に管理出来るという保証もなく、また現場職員や作業員の意図に関係なく突発的な事情により適正に施工出来ない場合もあり得ます。
ちなみに欧米では仕様通りのコンクリート工事を行う為に、見張り・検査役の“インスペクター”が付いています。欧米の典型的な性悪説に基づいた監理手法ですね。これはコンクリートに限らず殆ど全ての作業毎に実地の検査が行われます。日本では第三者の現場検査が行われるのは一部大型工事において役所の中間立ち入り検査が行われるか、大手設計事務所の現場監理がなされる場合を除いて非常に少ないと言えます。通常はゼネコンや工務店の責任施工となります。ゼネコンや工務店の選定においては、過去の実績や評判を注意深く参考にしながら、慎重に信頼できる業者を見極める事が大変重要と言えます。
特に戸建て住宅では過去の実績もなかなか判断しにくい場合も多々あるでしょうから、その場合はますます業者選定に気を付ける必要があります。或いは自分自身で最低限の知識を持ちながら、着工後は自らが頻繁に現場に赴く事も大事でしょう。或いは建築の専門家に依頼して立ち入りの検査をお願いする事も増えていえるようです。大型工事おいても最近では本来専門家ではない発注者に変わり現場の施工管理や使用される材料のチェックを行ってくれる監理も増えています。これが欧米で主流の管理方法であるPM(プロジェクト・マネジメント)CM(コンストラクション・マネジメント)と呼ばれるものです。
つまり発注者の委託を受けて現場での施工の管理や打ち合わせ、工程管理等を行うシステムです。原則として、工事に直接かかわる施工業者や設計者との関連の無い独立した専門家、専門会社が行う事になります。利益相反を防ぐためです。
*監修加筆を五洋建設㈱山田茂樹さんにお願いしました。
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