2010年9月11日(土)
表参道ヒルズとラフォーレ
場所は一等地。建物も斬新。それでも人が少ない。そんな状況になっているのが「表参道ヒルズ」ではないでしょうか。安藤忠雄さんの設計で華々しく開業したのが平成18年2月。当初はマスコミにも多々取り上げられ、館内は押すな押すなの大盛況でした。ところが半年も経つと来客も減り、今では話題になることもあまりありません。館内から一歩外の表参道に出ると、相変わらず大勢の若者が歩いていますが、表参道ヒルズの中はガラガラ。何が原因なのでしょうか?
思うに、ビルオーナーは設計に凝ったビルを作ればお客さんも喜んでくれる(と言うか高い賃料が取れる)と思い勝ちですが、リピーターのお客さんは建物を見に来るのではなく、お店に買い物にくると言うことだと思います。そりゃ清潔で広いトイレがあったり、座ってくつろげるスペースがあったりするのは必要ですが、奇をてらった設計や構造・内外装部分に金を掛けるのは考え物です。商業ビルであれば、必要な内装はテナントが自らやってくれるのだし。
表参道ヒルズは同潤会青山アパートの再開発ビルですが、全体を経営しているのは森ビルです。森ビルと言えばラフォーレも経営しているので、商業ビルでは長年の経験と実績があります。ラフォーレ原宿は建物に金を掛けていないただの箱ですが、いまだに沢山の若い女性を惹きつける上手な商売をしています。それなのに何故?
3年前にラフォーレ出身の方に、このような話を聞きました。
・ 表参道ヒルズは、森稔社長のプロジェクトと言うことで、ラフォーレのメンバーは一切関われなかった。
・ ラフォーレのメンバーが関わっていれば、決してあのような歩きづらい建物は作らなかったし、あのような運営スタイルにはしなかった。
一度できてしまった建物は簡単に変えられないので、まだまだ表参道ヒルズの苦戦は続くのでしょう。
大阪ミナミにアメリカ村という若者が集まる渋谷のような町があります(住所は大阪市中央区西心斎橋)。ここに「Big Step」という商業ビルがあります。元々小学校だったところが廃校になり、大阪市が第三セクター方式で商業ビルを作ったものです。大阪市の負債を減らすと言うことで、平成19年に競争入札に掛けられました。
ビル名称が示す通り、1階から地下2階まで外部に巨大な階段が設けられ、低層部の半分くらいが、ぽっかり穴が開いています。ここに若者が階段をベンチ代わりにして、くつろぐと言う設計思想だったのでしょう。でも商業ビルの場合、一番賃料の取れる1階、地下1階、2階はできるだけ床を増やすのが常道です。肝心の賃料を稼ぐ部分が少なくなっているし、ビル管理コストは激高ですし、規模の割りに利益が出にくいビルでした。
入札当時はミニバブルもあり、心斎橋のOPAを傘下のリートで購入していたパシフィックホールディングスが約167億円で購入しました(パシフィック社は、平成21年3月会社更生法申請)。この案件に関しては今でもかなり苦労しているでしょう。
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