2010年6月3日(木)
1-2 登記識別情報を使った新登記制度
平成17年3月より不動産登記法が改正され、新しい制度に移行しました。一番大きな変更点は、インターネットを使ったオンライン登記ができるようにしたこと、今まで使用していた「登記済証(権利済証)」に代わって、「登記識別情報」が使用されることになったことです。だからと言って、今まで不動産登記の権利証書として重要な役割を担っていた登記済証がすぐに無くなるわけではなく、暫くは共存して行くことになっています。登記申請自体も、オンライン申請もできるし、従来通り法務局持ち込み方式での登記申請もできます。
「登記識別情報」とは何かと言うと、不動産1筆ごとに12桁の暗号(パスワード)が付けられた書類のことです。12桁の暗号自体に価値があり、書面には効力がありません。例えば東京の例では、平成17年3月以降の不動産売買では登記が完了すると登記済証の代わりに、登記識別情報が交付されています。この不動産を次に売却する時には、登記識別情報に書かれた12桁の暗号を司法書士さんに伝えることで、所有権移転登記がなされます。登記識別情報と言う書類が無くても構わず、とにかくその暗号が分かっていれば他の書面(委任状、本人確認情報、印鑑証明書、住民票)と一緒に不動産登記ができてしまいます。
登記識別情報は、不動産権利者1人毎に、また土地1筆毎、建物1棟毎に発行されます。夫婦で1戸建マイホームを共有で買えば、旦那さんと奥さんそれぞれに、土地と建物毎に登記識別情報が発行されます。土地が3筆あったとすれば、土地3筆毎に異なった登記識別情報が発行されます。
ここでこの制度の一番心配な点は、もし何かの拍子に12桁の暗号が他人に知られてしまうと、悪用されてしまう点があることです。その為に登記識別情報には、シールが張って見られないようにしてあり、そのシールをはがさない限り暗号が見ることができません。しかし、その不動産を担保に入れて資金調達しようとする場合には、シールを剥がして暗号を司法書士に伝え、担保設定をすることになります。シールをはがすと、そのシールは二度と貼り付けられないようになっていますので、それ以降はシールをはがした状態で保管しなければなりません。間違っても登記識別情報の暗号が書かれたコピーを取るなどと言うことは、差し控えた方が良いでしょう。
オンライン登記申請は、売主・買主とも電子証明書を発行することで行うことになっています。電子証明書とは、個人であれば住民票所在地の市区町村の役所、法人であれば所轄の法務局が発行してくれますが、まだまだ普及はしていません。また原因証書が従前の登記済証では、オンライン登記申請ができない不都合もあります。登記申請のオンライン化が少しでも進むように、「半ライン制度」が導入され、本人確認は従来通りの委任状・実印・印鑑証明書で、登記済証の場合は、PDF化してオンライン申請をすることができます。決済完了後に、司法書士が原本を郵送するか持参するかで、有効にすることができます。
ただ現状は使い勝手が良いとは言えず、わざわざこのような不動産登記のオンライン申請制度を作る必要があったのかどうかは、大いに疑問が残るところです。
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