2010年12月2日(木)
神田明神の平将門様
JR御茶ノ水駅北方に、江戸108か町の総氏神様「神田明神」があります。江戸城増築に際して、江戸城の鬼門(北の方角)を守るため現在地に移転しました。“江戸の鬼門を封じる”神田明神は、江戸の総鎮守と言われています。神田明神の周囲には、江戸108か町の代表的な社が並んでいます。
神田明神に祀られているのは、3人の神様です。
・一ノ宮 大己貴命(大黒様)
・二ノ宮 少彦名命(恵比寿様)
・三ノ宮 平将門神(将門様)
平将門が祀られているのは、昔将門のお墓周辺で1300年初頭に疫病が流行ったり、天変地異が多発し、これはきっと将門様が怒っている。この怒りを鎮めようと言うことで、平将門を祀ることになったそうです。菅原道真公を祀っている天神様も、怒りを鎮めるということで、話しが似ています(藤原家がライバルの菅原道真を蹴落とすため、遠い太宰府まで左遷し、失意のうちに道真公死去。その後藤原家や天皇家に次々と災難が降りかかり、道真公のたたりと恐れられた。道真公の怒りを鎮めるために天神様を建立)。
平将門は京の朝廷に逆らった謀反人とされていますが、関東では京の都から派遣された悪い役人をやっつけ、民衆を助けた英雄として語り継がれました。お上に立てつく反骨精神が、江戸庶民にも熱烈に支持されたと言うのです。
明治維新後、明治政府は朝廷の敵であった平将門は祭神に相応しくないと言うことで、神田明神の神様から外してしまいました(1874年:明治7年)。平安時代のことを根に持つなんて、なんという執念深さでしょう。それまでは大黒様と将門様の二人を祀っていましたが、将門OUT、恵比寿様INで、代わりに少彦名命(恵比寿様)が入ってきました。
神田明神の氏子は当然猛反発しましたが、それから長いこと神様から外されたままでした。将門を祭神に戻す運動はその後も続き、1984年(昭和59年)にようやく祭神に戻ることができました。実に100年近く掛かったのです。
一方、室町幕府前後、南北朝で朝廷側に付いて戦った楠正成は、明治になって昇格組の一人でしょう。東京駅から行幸通りを皇居に向かった皇居外苑に、楠正成の銅像があります。また兵庫県JR神戸駅の北側にある湊川神社は、楠正成を祭神とした大きな神社です(湊川は楠正成が足利直義の軍と戦い敗れ、自害した場所)。でも湊川神社ができたのは、1872年(明治5年)と新しいものです。明治以降は「大楠公(だいなんこう)」と称され、1880年(明治13年)には正一位を追贈されています。500年以上の前の武将に正一位を授けるのか。明治政府は、喰いタンどころか喰いピンフまで、何でもありありだ。
歴史上の人物も為政者の立場によって、没後長く経過した後も浮き沈みがあります。
追記1)12月暮れ近くに行った折、百度石の碑と大黒様石造の間に、藁でできたしめ縄の丸い輪が作られていました。しめ縄の輪を8の字にくぐってから大黒様にお願いすると、願い事が適うようです。
追記2)大黒様、恵比寿様の石像があるので、平将門公の石像を探しましたが見つかりませんでした。入口付近に将門公のお神輿だけが飾ってあります。お土産物屋のお母さんに、「将門さんの像は無いのですか?」と尋ねると、”御社殿(ごしゃでん)”の中に小さい像があって普段は公開されていない。2年に一度のお祭りの時だけ、一般の目に触れられるとのことでした。何故だろう、まだ天皇家に遠慮しているのでしょうか。
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