2010年12月21日(火)
新潟市の無農薬・無化学肥料の米作り生産グループ「新潟有機稲作研究会」
12月11日、12日に銀座ミツバチプロジェクト主宰の新潟ツアーがあり、私も参加させて頂きました。農業生産者の方の現場を訪ね、少しでも都市住民が農業の現場を知ろうと言う主旨のツアーです。
最初に訪ねたのが、新潟市北区新井郷で米約6ha(6町部)、他に野菜を栽培している上野晃さんの農地です。バスで着くと、そこは上野さん自慢のビニールハウス。幅10m、奥行き30m、高さ4mくらいある(あくまで目測)大きなハウスです。そこに建築現場で使う養生シートとゴザを地面に敷きつめ、テーブルを縦に2列並べて待っていてくれました。入ろうと思えば60人、70人くらい入れる余裕があります。
ここで餅つきをして、上野さんお手製の豚汁をお餅と一緒にご馳走になりました。農地にあるビニールハウスで餅つきをして、その中で食事をして楽しむ。なかなか味わえない田舎ならではの異空間。都会人の農村体験ツアーには凄いインパクトがあります。都会の小学生の遠足で使えれば、楽しい農村体験として、子供らの脳裏にも深く刻まれるはずです。
食事後上野さん(54歳)、上野さんのお父さん、上野さんの長男さん(新潟農業大学学生で農家を継ぐことになった12代目)から話しを伺いました。
・上野さんは「新潟有機稲作研究会」のメンバー。農薬や化学合成物質を使わない米作りを目指すグループで、会員は現在12人。田んぼは稲だけが育つところでは無く、ミジンコやオタマジャクシ、トンボ、白鳥など様々な生き物が共生する場所だと考えている。
・冬に田んぼに水をたたえ、白鳥やオオヒシクイ(ガンカモ科の天然記念物)などの渡り鳥が集まる田んぼの管理をしている人。ホタル復活プロジェクトに関わる人。食べる人との交流を大切にする人。各人色々なアプローチで、有機稲作を実践している。それぞれの稲作技術、考え方を共有することで有機稲作を実践している。
・上野さん自身は、合鴨を使った除草で無農薬の田んぼを作っている(手間が相当にかかるので、全部の田が無農薬までは至っていないよう)。稲がある程度大きくなると、合鴨が稲を食べてしまうので、その後は人の力で草を抜いている。
・菜種粕や屑大豆、天日塩などを肥料に使っている。お米本来の味を追求し、自然にも優しい農業に取り組んいる。
・米農家の中には、成長ホルモン剤を使って米を作っている農家もある。自分たちはそういう安全に疑問があるような薬剤は、絶対に使いたくない。
上野さんから帰りがけに、お餅とお米1kgのお土産まで頂きました。それを先週食べましたが、正直最近食べたお米の中では断トツで美味しいお米でした。弾力があって、甘みが強い。ネット直販で5kg6000円とやや高いのですが、旨さからするとそれだけ価値のあるお米だと思います。
http://www.nn-2.com/4EnDyjnN_Maker_Maker_index_17.html
夜の部は、地元農家の方(米農家、洋ナシのル・レクチェ生産者)、農業レストラン経営者、観光関連の方たちとの交流会(宴会)です。そこで、新潟有機稲作研究会の精神的支柱の宮尾さん(40歳前半?)と少しだけ話しができました。上野さんの話しによると、東京の消費者の方に宮尾さんの米信奉者が多く、物凄い人気らしいのです。宮尾さんは、時折東京に出て消費者の方の家を訪ねて、直接意見を聴いているとのこと。そして味のある手書き1枚のエッセイを会員の方に送っているそうです。
http://e-farm.atori.net/products/rice2/
宮尾さんからは細かい話しまで聞けなかったのですが、冬も田んぼに水を張り(冬季堪水:とうきたんすい)、自然の状態で鶏を飼い、鶏糞を肥料にしたりしているそうです。HPには、”土着微生物・落葉・海水・米ヌカ・麦ワラなど、地域の宝物を活かした米作り”が謳われています。ネット直販の価格は、1kg600円~700円ですので、スーパーで買う価格と大差ありません。
私:「岩澤信夫さんの提唱する不耕起・冬季堪水は、化学肥料も不要、除草剤などの農薬も不要ということで素晴らしいと思いました。何故、こういう農法がもっと広がらないでしょう。」
宮尾さん:「岩澤さんの農法は合う田んぼには合うのですが、合わない田んぼにはその通りになりません。地域の環境、気候、土の性質などにより、田んぼの性質は千差万別です。従って、不耕起・冬季堪水だけでは除草までは完全にできません。結局、農薬を使わないで除草をするには、人の手で抜くとか、凄い労力が必要になります。」
そうか、何ヘクタールもある田んぼの草を人の手で抜くなんて、そんな手間が掛かることはできなよなぁ。部屋に置くだけで掃除をしてくれるアイロボット社の「ルンバ」。同じように田んぼに入れておくだけで、稲以外の雑草を瞬時の識別して、全部刈り取ってくれるロボット「草刈正夫くん」が発明されれば良いのに。もし、これをホンダあたりが開発してくれたら、無農薬有機農法の生産者はどんなに楽になることか。
追記)日中、バスで移動している時に数カ所、何十羽の白鳥が集中して集まっている田んぼがありました。他の田んぼは見向きもせず、その田にだけ白鳥が集まっているのです。おそらく無農薬の冬季堪水の田んぼなのでしょう。水を張りっぱなしにすることで、ドジョウ、タニシ、ミミズなどが豊富に生きることができます。宮尾さん、上野さんたちが目指す生物との共生がそこにありました。
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