2011年4月9日(土)
埋立地の液状化現象とサンド・コンパクション・パイル工法
今回の東日本大震災で東京、神奈川、千葉エリアは震度5程度でしたが、地盤の緩い浦安市、横浜市金沢区、久喜市などでは液状化現象による多大な被害が出ました。4月の上旬に、新浦安駅、舞浜駅周辺を見に行ってきましたが、至る所地盤が大きく下がっていました(地中の砂が噴出したので、地盤が下がる)。
新浦安駅前のダイエー店舗は、歩道地盤が30cmくらい下がっていました。その段差部分にアスファルトをスロープ状に敷き詰め、緊急工事を施していました。新浦安駅北側の歩道橋は、80cmくらいの段差ができ、通行止めになっていました。マンション団地では、下水道インフラが破壊されたためか、仮設トイレが並んでいました。
この浦安の埋立について、知人のMさんがくれたメールがありますので、その一部を記載してみます。
・阪神淡路大震災の際も、神戸ポートアイランドの一部で液状化が起きたが、今回ほどの被害は無かった。今回の震度5レベルから考えると不思議だが、液状化被害の原因は埋め立ての工法にある。
・通常の埋め立ては、山の土、石などを持ってきて埋め立てる。浦安の埋め立ては、このような土石を陸上から持ってきたのではなく、市川沖の東京湾のヘドロで埋め立てた。浚渫(しゅんせつ)船で攪拌(かくはん)し、泥水をポンプで埋め立て予定地に撒いて、暫く時間をおく。やがて海水と土が分離し海水は海に帰り、埋立地が出来上がる。当時、干潟を守る環境団体は、この工法に反対していたが、山を削って、ダンプカーが行きかうわけでもなく、安全で環境にやさしい工法と言われた。
・ヘドロで作った埋立地は、十分乾燥させてから事業化する必要があるが、実際には生乾きのまま、事業化している(かつてTBSの報道番組で放映された)。
・もっとも、浚渫してその土地で埋め立てをするという工法は、江戸時代から使われている。江戸の運河を作る時に運河を掘削した土は埋め立てに使われ、また、運河を維持するためにも、適宜の運河の浚渫が必要。河川や運河の土を埋め立てに使うことは、本来はノーマルなこと。充分に乾燥すべきところを怠ったところに原因がある。
そうか、浦安の埋立事業は海浜のヘドロだったのか。最初に臭い水が出てきて、その後に砂が噴出したというのもうなづけます。一方浦安の象徴、東京ディズニーランドは、駐車場の車が飲み込まれるなど、かなりの被害が出た、だから閉園したのだと、当初噂されました。結局、テーマパーク内はほとんど被害が無く、4月6日に無事営業を開始しました。舞浜駅のショッピングセンター「イクスピアリ」も見に行った時は、ほとんど無傷でした。あれだけ液状化被害が出た浦安市で、なぜディズニーは無傷でいられたのでしょうか。
先日、テレビでこれを取り上げ、ディズニーが行った液状化対策「サンド・コンパクション・パイル工法(Sand Compaction Pile Method、SCP工法)」について説明していました。サンド・コンパクション・パイル工法は、竪穴を地中深くまで開け、そこに砂を詰めていく締め固めの工法です。
テレビでは、鉛筆入れと鉛筆を使って説明していました。鉛筆入れで鉛筆の本数が少なければ隙間が多いので、カタカタ揺れが大きい(土壌の密度が少ないことによる液状化現象)。これに鉛筆を足して、ぎっしり詰めるとカタカタ音がしない(揺れが無くなる)。これが締め固めの基本原理で、隙間を埋める(締め固める)のが砂の柱と言うことです。
技術的表現では、「ケーシングパイプを打ち込み、直径1mくらいの穴を垂直に掘る。この時打設音が相当発生する。ここに砂の杭を打ち込み、振動させることで、よく締まった砂の杭を作る。砂の柱を打ち込むことで周りの緩い地盤も締まっていく。その砂の柱により、地盤の中の水分を抜く効果もある。」という工法です。
ウォーターフロントは、どこもかしこも液状化現象で住むのが怖い。これが一般人の常識になりつつあります。しかし、山の土石を使った埋立地や、ディズニーのようにSCP工法によるしっかりした埋立工事を行っているところは、被害が少なかったというのも事実です。建設業界、不動産業界はしっかりとこの事実を伝え、行き過ぎた不安感を抑えなければなりません。そうしないと、ウォーターフロントの土地、マンションの資産価値は、下落の一方です。
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